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三十九、キサラの考え
「話を変えよう」
ぱん、と手をたたいて、カゲツが妙に明るい口調に変わる。
「妖狐の血が入っていても、私は円弧先生の医者の技術に疑問を持っているわけではない。そうだな、赤居、坂城」
「その通りです」
「き、キサラ先生は、非常によい医師です。薬の調合、配合、診察。人間の能力を駆使した技術の持ち主です」
赤居と坂城がすぐに答える。
それに疑問を持った様子もなく、カゲツは頷いた。
「では、円弧先生に聞きましょう」
「……はい」
カゲツの瞳を受け止める。
「あなたの医者としての見解を聞きましょう」
「はい」
「ナツヒはこのままこの薬を続ければ治ると思うか?」
「……正直に申し上げます」
ここで正直に答えなければ、きっとこの妖気の渦に飲み込まれる。
今、キサラは、人間として、答えを求められている。
感情に左右されない、答えが。
「ナツヒ様のお力であれば、このまま完治できると思います。少し調整をした後中止できる可能性が高いです」
「なるほど、では」
カゲツの微笑みが、嫌な笑いに見えてきた。
肌にひりつくわずかな妖気が変わった気がする。
ぴくり、ナツヒが反応した。
「こうしよう。円弧先生。今まで本当よく努めてくれた。あなたにもあなたの患者がいるだろう。元の沼地に戻るように」




