三十七、楕円形の机
「当主様、本当によろしいのですか」
赤居は目の前の光景をみて、訝しげな目をカゲツに向けた。
「キサラ様をお呼びするんですよね」
「まあ、見ていればわかるさ、なぁ?藤」
「はい、カゲツ様」
カゲツの後ろにいる、人間藤は縁なしめがねを正しながら、静かに頷いた。
「今回の夕食会は、それが適切だからね」
* * *
「……随分と突然ですね」
「あの父上はいつもそうだ」
ナツヒと食事をした数日後。
ナツヒと共に当主に再び食事会に呼ばれた。
「大方、俺が元気になったから会う気になったんだろ」
「先日の食事についでは?」
「だったら、君が一緒に呼ばれるはずがない」
「そうですか……」
鬼の考え方は鬼の方が詳しい。
ナツヒがそう言うのであればそうなのだろう。
扉を開いて、食堂に入る。
室内の光景をみて、キサラは固まった。
部屋には、前回用意されていた丸い円卓ではなく、四角い机が用意されている。
楕円形の机が部屋の端にあるが、キサラが座る場所はそこではないようだ。
中央にある四角い机。
その周りにカゲツ、リン、エンが立っていた。
「ああナツヒ、円弧先生。よく来ましたね。ナツヒが元気になったようでよかった。これも偏に円弧先生の診療のおかげですね」
「……」
キサラは己を抑えて、黙って頭を下げる。
笑顔が崩れないカゲツはいけしゃあしゃあとそう言う。
ナツヒは黙ったまま、カゲツを睨んでいた。
「久しいな、ナツヒ。元気そうじゃないか。私は嬉しいよ」
「一度も部屋にこなかったくせによく言えるな」
「ナツヒ様!当主様は!!」
部屋の端に立つ赤居が思わず、と声を上げる。
それを、表情も変えず、カゲツは制した。
「よい、赤居」
「当主様……」
「二人とも座りなさい」
そう言って示す四角い机。
壁際に立つ坂城が心配そうにこちらをみているのがわかった。
キサラは唇を固く結んだまま、椅子に近づいた。
ナツヒも舌打ちをした上で椅子に座る。
キサラはナツヒの隣に座りながら、ちらり、と部屋の端にある楕円形の机に目をやった。
赤居、坂城、藤。
鬼と人間が座る机。
四角い机にキサラが座るように言われた、ということは、キサラは人間として扱わない、という意思表示だ。
ナツヒの性格や先ほどの反応を考えると、カゲツや赤居にキサラのことを言ったとは思えない。
これはカゲツがキサラのことを知っている。
「さて、夕食にしよう」
カゲツが合図をすると、見計らっていたかのように、机に食事が並べられた。




