表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/86

三十五、坂城の思い

初めて食べた家庭料理は、言葉にできなかった。

まともな家庭料理は食べたことがなかったのだと知った。

坂城の言ってた『自慢の手料理』というのは本物らしい。


「円弧先生はお酒はどうかな?」

「あ、少しなら」

「彼女のつくるあてもおいしいんだよ」


そんなことを言っていると、ユナが()(ばち)を持ってくる。

ゆで卵にネギのたれがかかっている。


「ユナさんの食事は本当においしかったです」

「ありがとう」

「ユナは私が昔通ってた定食屋さんの娘さんでね」


お酒を注ぎながら坂城がそんなことを話してくれる。


「そこの食事がとてもおいしくて。医者になったときに求婚したんですよ」


そんな話から始まり、やがて紅家の話になる。


「ナツヒ様は本当に他人と関わらない方でした……マサ様が(ゆい)(いつ)のご友人でしたが、病気がわかってから、マサ様も来られず。紅家の専属医として、治すためにさまざまな手を使いましたが、キサラ先生が来てから本当に助かってるんです……」

「すいません、父はいつもこんな感じで」


いつもの様子とは違う坂城の姿に、()(まど)っていたキサラ。

ショウは苦笑する。


「いつも父はキサラ先生に感謝していました。詳しいことは聞いていないんですが、キサラ先生がきてから、紅家の雰囲気もよくなったと」

「そう、でしょうか」


正直、自分が来る前の紅家を知らないのでわからない。

だが、坂城がそう言うのならそうなのだろう。


「あ、すいません……」


坂城がはっとしたようにキサラを見る。


「その、自宅では、キサラ先生と呼んでしまっていて……」

「まぁ、いいですよ?」

「本当に感謝しているんです、あんなナツヒ様ですが……逃げずに対応していただけるとありがたいんです……」


坂城からそんな風に言われるとは思っていなかった。


「以前はもっと()()も多かったんですよ。鬼しかいない、狭い屋敷の中で。僕もいろいろな話を聞いてました。でも、キサラ先生が来てからは楽しそうに思います」

「私は何も……」


いろいろなことを思っても、坂城には安心して過ごせる場所がある。

それはキサラが持っていないもの。

キサラは坂城とショウがうらやましく思えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ