表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/86

十六、治療の再開

「失礼します」

「おはよう、キサラ」


開けられたカーテン。

明るい部屋。

寝台の上には、笑顔のナツヒ。


「待ってたよ。今日もその声が心地いい」

「お薬は飲みましたか」

「君を待ってた」

「飲んでください」


キサラは貼り付けた笑顔でそういう。

ナツヒは嫌がる風もなく、薬を手にしていた。

それが確実に口の中に入っていくのを確認して、キサラは記録をつける。


「調子はどうですか」

「やっぱり薬を飲んでるほうが、調子がいいな」

「なら飲めばいいじゃないですか」

「俺は、君のために治しているようなものだから」

「あなたの体です」


キサラは思わず突っ込む。

キサラにしてみたら、ナツヒがどうなろうと、知ったことではない。

ただ、この国は人間と鬼の協力でできた国。

その中でも力を持つ鬼である以上、ないがしろにはできない。

だからこそ、キサラは今ここで働いているのだ。


「そういえば、今夜、当主様とお会いする予定です」

「ああ、そうらしいな」


誰から聞いたのか、ナツヒは知っていたようだ。

あるいは、予想していたのかもしれない。

現当主が、息子でもある次期当主を心配して、その担当医に(あい)(さつ)をするのは、当然なのかもしれない。


「その際、ナツヒ様の情報をお伝えすることになると思いますが、(かま)いませんか?」

「ああ、問題はない」


人間と違い、鬼は(かい)(きゅう)を重んじる考え方を持つ。

その階級は妖力を(もと)にしたものらしい。

今のナツヒと同等か、それ以上の妖力を持つのが、今の紅家当主だ。

そういう意味で、ナツヒは当主には(さか)らえないし、当主がナツヒの情報を知るべきなのが、鬼の考え方なのだろう。


「わかりました」


(ごう)に入っては郷に従え。

キサラは、反論することなく、静かに頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ