十、週一回の不在
ナツヒの調子は日に日によくなっていった。
その次の日には、寝台の端に座るようになり、毛布は薄い掛け布団になった。
寝間着も軽装に変わり、部屋を歩き回っていた。
キサラの勧めで、入浴や散髪を行い、長かった髪は短髪に整えられ、二つの赤い角が存在感を放っている。
キサラが用意した薬を決まった時間に飲む習慣も身についてきたようだ。
「ナツヒ様。今日の調子はいかがですか?」
「悪くない」
キサラが紅家に来てから一週間。
キサラはいつもよりも早い時間にナツヒの部屋に来ていた。
「なんだ、今日は早いな」
「はい。この後用事があるので」
「用事?」
手早くナツヒの体を確認して、記録をつけていく。
「一週間に一回、別の場所の仕事に行きます。また、家の仕事もあるので、今日と明日は不在です」
「……なんだと?」
「代わりは坂城先生に任せています」
「なぜ?」
「それが条件で今回の仕事を引き受けましたので」
キサラは淡々と話を続けた。
赤い瞳が迫力を持ってこちらを睨んでいるが、今回ばかりは無視だ。
それに、こんなに良くなっているなんて、良い予想外だ。
「体の状態もよさそうです。お薬をしっかりと飲み続けてください」
「次はいつ会える?」
「早ければ明日の夕方にご様子を拝見させていただきます。遅ければ明後日になります」
「その間に悪くなったらどうすればいい?」
「坂城先生に相談してください」
キサラはちらり、と時計を確認する。
もう出発の時間だ。
「では、失礼しました」
「あ、おい……」
ナツヒの抵抗は予想内だ。
キサラはナツヒの制止を軽やかに無視し、足早に部屋をあとにした。