表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/64

各隊員の過去編(なぜ彼らはこの道を選んだのか)

では今回は――《ハゲタカ対策専門部》5人の隊員の“過去 に迫ります。


彼らはなぜ、目立たず、報われず、危険すら見えない「心の戦場」に自ら身を投じるようになったのか。

それぞれの痛みと決断、転機を描く 静かなるオリジン集

■《ハゲタカ対策専門部》各隊員の過去編

― 痛みを知った者だけが、痛みに寄り添える ―

藤田 ふじた・さとし


「怒りで世界を変えようとして、すべて壊しかけた」


元・青年運動家。

不当な労働、差別、理不尽な制度。若き日の彼は、怒りを剥き出しにして世にぶつけていた。

デモの先頭に立ち、拳を振り上げ、言葉で人を動かした。


しかし、ある事件で仲間がひとり、命を絶った。

「正しさを語るあんたが、俺たちを無理やり戦わせた」と遺された言葉が、彼の中で何度も繰り返された。


「怒りは武器じゃない。火なんだ。

火は照らすこともできるが、焼き尽くすこともある」


彼は“叫ぶ”のをやめ、「聴く」ことを選んだ。

怒ることを否定せず、その先に再生を灯す者になった。

柴田 雄大しばた・ゆうだい


「治せなかった命が、今も胸の底に沈んでいる」


元・精神科の臨床医。

最前線で“生きづらさ”と闘う若者たちを支えていた。

だが、ある患者を救えなかった。


少年だった。

信頼していた。もう大丈夫だと思っていた。

その翌日、少年は自ら命を絶った。


「僕の“時間”は、誰の中にも届いてなかったんですか?」


その問いが、今も消えない。

だからこそ彼は、時間をかける覚悟を持って、この部隊に入った。


「治すためじゃない。“待つため”にここにいる」


渡辺 忠太わたなべ・ちゅうた


「自由を奪うのは、暴力より“思い込み”だった」


元・更生支援官。

非行少年たちの矯正に携わる中で気づいた。


彼らを縛っていたのは、暴力でも家庭環境でもなかった。

「俺はどうせ、こういう人間だから」という思い込みだった。


「自由になれ」と言っても、本人が自分を許していなければ変われない。


忠太は、矯正という枠組みを離れた。

代わりに「その思い込みを解き放つ風」になることを選んだ。


「信じられる選択肢を、ひとつ増やす。それが俺の仕事」


山内 健太やまうち・けんた


「誰も、自分を必要としていないと思っていた」


元・避難民。災害で家族も故郷も失った。

避難所を転々とする中で、何度も聞いた言葉がある。


「あんたは、ここにいない方が助かる人が多い」


何もしなければ、誰にも迷惑をかけない。

そう思い込み、壁のように沈黙するようになった。


それを変えたのは、ひとりの老婆の言葉。


「あんた、黙ってるだけで、ここに“安心”があるよ」


自分の“在る”ことが、誰かの心の支えになる。

そのとき初めて、動かずに“守る”という役割を知った。


今は、誰かの「最終拠点」として、黙ってそこにいる。

   松川 正平まつかわ・しょうへい


「過去に置き去りにした人が、今も夢に出てくる」


元・歴史研究者。

戦争史、災害史、抑圧の記録――“過去”を語る専門家だった。


だがある日、ある被災女性からこう言われた。


「あなたの話には、私たちの人生がない。

あんた、私たちの“死に損なった時間”を何に使うつもりなの?」


その夜から、彼は資料より人を見つめるようになった。

記録より、生きている“今”にある言葉を記録したくなった。


「その人の“経験”が歴史になる瞬間に、立ち会いたい」


だから今、彼は静かに人の隣に座り、痛みを言葉にする手助けを続けている。

■ 最後に


彼らは皆、一度、自分の“正しさ”に傷ついた者たちだった。

そしてその痛みから逃げず、“再定義”の中に立ち続けている者たちでもある。


「俺たちは、救世主じゃない。

ただ、 もう一度、生きる選択肢”を示す係だ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ