心の再生を支える者たち
火 火のように燃える心を持つ 藤田 聡
水 水のように穏やかな 柴田雄大
風 風のように自由 渡辺忠太
土 土のように揺らがない心を持つ 山内健太
時 常に歴史的観点からものを見る 松川正平
ハゲタカ対策専門部 ― 心の再生を支える者たち
人の弱みに付け込む者がいる。
損失、喪失、裏切り、絶望。そんな傷口に群がるハゲタカのような存在に、人の心は食い荒らされる。
それを許さない者たちがいる。
名を「ハゲタカ対策専門部」。
彼らは、表に出ることのない戦場に身を置く。戦う相手は、外から見えない。だが確実に存在する心の崩壊。
そして、誰もが知らずに抱える痛みだ。
部隊の特徴はただ一つ。
「心の傷を癒すことを最優先とする」
その一点に全精力を注ぐ、異色の部隊である。
彼らは茶羽織を羽織り、静かに現場へと向かう。
見た目に派手さはない。しかしその背中には確かな覚悟がある。
火 ― 藤田 聡
燃え上がるような情熱を持ち、傷ついた者の怒りや悔しさに正面から向き合う男。
「怒れ。それでいい。だが、最後は前を見ろ」
その言葉に、どれだけの人がもう一度立ち上がっただろうか。
火はただ燃やすだけではない。暗闇を照らす光にもなる。
水 ― 柴田 雄大
感情の激流に溺れる者に、静かに寄り添う。
決して焦らせない。ただ黙って隣にいる。
「時間が必要なら、ここにいるよ」
その穏やかな声が、張りつめていた心を解きほぐす。
水は流れ、そしていつか、命を育む土へとしみ込んでいく。
風 ― 渡辺 忠太
固定観念に縛られた心を、風のように軽やかに解き放つ。
「そんな考え、捨ててもいいんだよ」
彼の言葉に救われる人は少なくない。
自由とは選択肢だ。彼はその存在自体で、それを示している。
土 ― 山内 健太
動じない。決して揺れない。
「ここにいていい」
彼の一言は、それだけで人を安心させる。
ブレない土台があれば、人は再び立ち上がる。
山内はその土台であり、最後の拠り所でもある。
時 ― 松川 正平
過去を見失った者に、物語の意味を取り戻させる。
「君の痛みは、歴史の中で意味を持つ」
彼は、個人の経験を社会の文脈に織り込む。
時を知る者は、今を生きる術も知っている。
彼らが扱う技術、TYATGDP。
これは最新の認知処理支援ツールであり、心の深部にあるトラウマ記憶の修復を可能にする。
だが、それを使うのはあくまで人の手。
道具に頼らない。
技術に依存しない。
向き合うのは、あくまで「その人」そのもの。
最後に
ハゲタカのような存在が、今日も誰かの心に爪を立てる。
だがその背後に、この部隊はいる。
彼らの仕事は決して目立たない。
だが、確実に「救っている」。
静かに、誠実に、人の心に向き合う男たちの物語。
それが、ハゲタカ対策専門部だ。
今日もプライベートジェットに乗り周辺国を救っていく
ドラマチックに
■《ハゲタカ対策専門部》
― 心の修復者たち、空から舞い降りる ―
夜明け前、滑走路に一機のジェットが滑り込む。
マーキングはない。だが、機体には人知れず記された文字がある。
“TYATGDP-α対応機”
中から降り立つのは、黒ではなく茶色の羽織をまとった者たち。
特別な階級章も勲章もない。ただ、目だけが静かに燃えていた。
今回の行き先:ヴェラ連邦、第三州。
—ハゲタカと呼ばれる者たちが、震災後の孤児や失業者を“依存ビジネス”に引きずり込んでいた。
■【MISSION:心の奪還】
◆ 火:藤田 聡
被災者の集まる仮設住宅地。
怒りを抑えきれない若者が叫んでいた。
「なんで俺たちばっか、こんな目に遭うんだよ!」
誰も近づけなかった。だが、藤田だけは歩み寄る。
肩を組む。怒鳴り返すように、しかし、優しく言う。
「怒れ。それでいい。正しいことだ。
でも、その怒りを“誰かを壊す”方じゃなく、“何かを変える”ために使え。
お前の火は、燃えていい火だ。」
若者は、泣いた。
藤田は、その涙を「感情の回路が戻った証」として、黙って受け止めた。
◆ 水:柴田 雄大
行政相談所の一角で、失語に近い母親がいた。
言葉を発することができない。
柴田はただ、隣に座った。
何も言わず、同じようにお茶を飲む。
1時間。2時間。誰も焦らせなかった。
やがて、彼女はぽつりと呟いた。
「……子どもにだけは、生きてほしいと思うの」
その一言に、柴田は深く頷いた。
「大丈夫。あなたは、まだ“想ってる”。
だったら、再出発はできる。」
水のように静かに、心にしみ込む対応だった。
◆ 風:渡辺 忠太
相談ブースにやってきた青年は、罪悪感で動けなかった。
「俺のせいで、親父が…倒れたんだ…何もできなかった」
忠太はゆるく笑いながら、椅子に座る。
「その“せい”ってやつさ、空に投げたらどうかな。
いったん全部、風で飛ばしてみようよ。
それから、自分の手元に何が残るか、見てみる」
青年は目を見開いた。
“選び直していい”という感覚が、初めて自分の中に許された。
◆ 土:山内 健太
支援拠点に通えず、引きこもる老人の家に訪問。
誰の声も届かない中、山内はただ言った。
「ここにいていい。俺も、しばらくここにいる」
三日間、同じ食事をとり、同じ景色を眺めた。
やがて老人がつぶやいた。
「……ここまで来てくれた人は、おらなんだ」
それから、少しずつ、外の話を始めた。
彼の存在そのものが、立ち上がるための土台だった。
◆ 時:松川 正平
記憶をなくした戦争難民の青年。
名前すら忘れた。何者でもなかった。
松川は彼に、絵巻のように物語を見せた。
過去の紛争、家族構成、土地の文化。
「これは君の物語だ。歴史が、それを今につなげてくれる。
忘れたんじゃない。壊されたんだ。
でも、物語は“再構成”できる。」
青年は初めて、「自分の話を語る力」を取り戻した。
■ ハゲタカの陰で、静かに起きていた“心の再生”
その地には、
どこかで泣きながら眠る子どもがいて、
生きる意味を見失った大人がいて、
自分を責める者、誰にも信じられない者がいた。
ハゲタカたちは、それを“餌”に変えていく。
依存、支配、過剰な救済、言葉の暴力。
だが、ハゲタカ対策専門部は違った。
彼らは奪わない。
与えないことすらある。
ただ“そこに在る”。
そして、その人自身が、自分を取り戻す支援を行う。
■ プライベートジェット、再び離陸
救われた顔を背に、再びジェットが夜空へと消える。
報道もなければ、称賛もない。
だが、誰かの“生きるという火”が再び灯った場所に、
彼らの影があった。
「戦ってないように見えるか?
違う。
俺たちは、“見えない戦場”で戦ってるんだ」
■ これは戦いの記録ではない。
■ 人が人として再び立つ、その静かな奇跡の物語である。




