火除け補佐・レンの話
カズマが再定義した“守る”とは、
1 指示された対象ではなく、自らが信じた価値を守ること
2 暴力ではなく、安心をつくる技術
3 誰かの自由や信頼を、邪魔せずに支えること
だった。
■ 火除け補佐・レンの話:
―「お金だけじゃない」と気づいたとき、世界が静かに変わった ―
レンは、元々は町の武器商人だった。
利ざやで動く、流通の勝者。情報は早く、読みは鋭い。
彼にとって「人生とは、いかに効率よく儲けるか」だった。
《里山ダンジョン講》に出会ったのは、投資先を探していたときだ。
「この思想、いずれブームになる」
「火除けという名前も使い勝手がいい。ブランド化できる」
最初はそんな打算だけだった。
■ 1.「やらせる」ではなく「やりたくさせる」
ある日、ショウが村の子どもたちと一緒に、広場の掃除をしていた。
レンはその光景を遠巻きに見ながら、こぼした。
「社長が雑用してどうすんだ。時間がもったいない」
だがその翌日、少年が言った。
「ショウさんが、いつも笑いながらやってるから、自分もやってみたくなるんだよね」
それを聞いて、レンは初めて「人は命令じゃ動かない」ことを実感する。
■ 2.「ありがとう」が見える場を作る
翌週、レンは半ばしぶしぶ、清掃活動に同行した。
終わったあと、小さな女の子が言った。
「ありがとう、お兄ちゃん。石、重たかったのに運んでくれて」
不意を突かれた。
「……いや、別に。ついでだから」
しかし、胸の奥が少しだけ温かくなった。
その夜、レンは一成にこっそり訊ねた。
「なあ、金がなくても……こういう“感謝”って、ほんとに残るもんか?」
一成は笑って答えた。
「残るさ。相手の記憶にも、自分の中にもな」
■ 3. 一人ひとりの役割を尊重する
ある日、奉仕活動のチームリーダーがレンに言った。
「レンさん、広報の仕事、お願いできますか?伝えるの、上手いじゃないですか」
本気で「得意」を見抜かれたことに、戸惑いと誇らしさが混じる。
「……そうか。俺、向いてるのか?」
それからレンは、自ら進んで“活動の意義”を村の外にも広めるようになる。
自分のスキルが「誰かの役に立つ」経験を、初めてした。
■ 4. 仲間意識を育てる
ある日、活動の打ち上げで焚き火を囲んでいたときのこと。
隣にいた農家の青年が、ビール片手にこう言った。
「ここに来るまで、誰にも認められたことなかったんだ。
でも、ここは違った。“お前のその一言で救われた”って言われた」
それを聞いて、レンは言った。
「……わかる。俺も、金でしか価値を感じたことなかったけど……今、ちょっと変わってるかもな」
自然と出たその言葉に、周囲の空気が温かくなった。
■ 5. ステップアップの道を用意する
活動を重ねたレンに、ある日ショウが言った。
「次の新人サポート、任せていいか?
君だから伝えられる“最初の一歩”があると思う」
レンは一瞬戸惑ったが、静かにうなずいた。
彼の目にはもう、「効率」や「利益」だけで物事を見る色はなかった。
■ 最後に、レンの言葉
フォローアップ会議で、レンが口を開いた。
「昔は、“お金を得ること”がすべてだった。
でも今は、“誰の記憶に、どんな形で残れるか”の方が気になってる。
感謝は通貨じゃない。だけど、価値がある。
それが“信用”ってやつだと、やっとわかった」
信じて、任せて、見守ること
こうしてレンは、「損得」で動いていた自分から、
「価値で動ける自分」へと静かに変わっていった。
誰かにやらせるんじゃなく、
自分がやりたくなるような場所に、
人は自然と集まってくる——
その原点に、ショウたちの“火”があった。




