「記憶の板」が揃い、“天空の門”を開く
旧き記録との出会い
■ 応答学館・地下記録庫
ナギの持ち帰った第二の板を手に、ショウたちは学館の地下にある「旧記録庫」へと降りていた。
そこには、世界がまだ神話だった頃の文書と遺物が眠っていた。
ダンジョンの技術を研究していた最初の賢人たちが、密かに封じていた場所だった。
サノがぼそっと言う。
「これが、“見る”の極地ってやつか……腹が冷えてきたぜ」
ショウが小さく笑って返す。
「でも、ここまで来たのは“見ないままにしない”って決めたからだろ?」
ふたつの石板を、祭壇のような台座に合わせる。
ピタリと重なると、微かな振動と共に、床下の紋様が光を帯び始める。
■ 天空の門 ――開く
学館の地のさらに下。
かつて“天空の門”と呼ばれた、封印された建造物がゆっくりと姿を現した。
無重力のように空間が歪み、目の前に現れたのは、金属と光でできた巨大な楕円の扉。
その表面に浮かび上がるのは、古代の言葉ではない。
**“視覚に直接流れ込んでくる思念”**だった。
「ここは記録の核。ここは監視の始まり。ここは“最初の誤算”の封印」
扉がゆっくりと開き、眩い光と共に、内側の空間が姿を現す。
中には無数の球体が浮かんでいた。記憶、記録、思想の種――それらを保存するための“知の庭”。
中央には、ひとつの巨大な球体が静かに脈動していた。
それが、“神”と呼ばれたものの残骸――いや、記憶そのものだった。
■ 記憶との対面
全員の頭に、直接“語り”が流れ込む。
「我らは“種を超えた思考体”。
かつてこの世界に干渉し、失敗した。
人の文明を導こうとし、崩壊を招いた。
よって記録を分断し、再接続の条件を“視る力”と定めた」
ナギが言う。
「じゃあ……今、条件を満たしたってこと?」
「否――観測はまだ続く。
だが、“受け入れようとする意思”が確認された。
よって、次の記録を開示する」
その瞬間、空間に映像のような記憶が展開される。
――無数の星を巡る探査体。
――そのひとつに辿り着く“青い惑星”。
――そこに生まれた文明、争い、崩壊、再建、そして沈黙。
――繰り返される歴史の輪。
そして最後に、ひとつの言葉だけが浮かぶ。
「君たちは、“選ばれた”のではない。
君たちは、“選び続けてきた”。」
■ 扉の先に何があるのか
扉の内側、まだ踏み込んでいない空間がある。
球体が一つ、ナギの目の前まで降りてくる。
ショウが聞く。
「これ……持ち出せるのか?」
球体が、静かに頷くように光を瞬かせる。
「これは“未来を問う種”。
村に持ち帰り、教えとしても良い。
拒絶しても良い。選択は常に、“見る者”にある」
ナギはそれを抱え、静かに言った。
「じゃあ私は、“話す”よ。
今度は、“言葉”を使って、この記憶を伝える」




