村祭り「土返しの宴」と「見る部屋」
■ 村祭り「土返しの宴」
祭りの日。村の中心広場には屋台が立ち並び、子どもたちが走り回る。
鍛冶場では鉄の飾りが火花を散らし、農民たちは今年最初の収穫を並べていた。
火除けと学館の若者たちは、全力で働いていた。
ナギは舞台設営を手伝いながら、板を担ぎつつ、力仕事に汗を流していた。
サノは剣舞を教え、元兵士の少年たちが村の広場で見事な型を披露する。
ショウは「見る屋台」と称して、ダンジョン産の“動く石”や“色の変わる布”を展示し、子どもたちに「何が見えるか?」と問いかけていた。
村人たちは最初こそ距離を取っていたが、徐々に顔をほころばせていく。
「ほら見ろ、ちゃんとやるじゃねぇか。畑の手伝いも、礼儀も、悪くないぞ」
「こっちの若い衆より気ぃ利くかもな!」
「学館の娘、飴細工うまいな~。あれ、勉強で学べるのか?」
そして夜、焚き火を囲む時間。
老いも若きも輪になって、異物屋たちと酒を酌み交わす。
ヨウジがぽつりと漏らす。
「“学び”っつーのは、文字や図面だけじゃねぇな。目の前の人間を、まっすぐ見ることだ」
■ 翌日・応答学館・「見る部屋」
ナギが長年持ち歩いてきた“言葉の板”が、学館の研究者たちにより、少しずつ読み解かれ始めていた。
彫られた文字は、村の地下深く、かつて“天空の門”と呼ばれていた建造物に使われていたものと一致していた。
ショウが板を指しながら読み上げる。
「『言葉は記憶。記憶は道。道を閉じれば、世界は盲目になる』……」
サノが呟く。
「これ、“言葉”が禁じられた理由、あるんじゃねえか?
世界を“見えないようにする”ために、誰かが意図的に隠したんだ」
ナギは板を撫でながら言う。
「私の村では、子が話す前に、板を見せられる。そしてこう言われる。
“これは見てはならぬ”。理由は、誰も知らない。ただ、そうされてきた」
そのとき、学館の老学者が顔を上げた。
「……この文様、もう一枚あれば“道”の先が分かる。
つまりこの板は、二枚一組の地図なんだ。半分の記憶だけでは、“門”は開かない」
ショウとサノが顔を見合わせる。
「じゃあ……もう半分はどこにある?」
ナギは黙って、小さく呟いた。
「――もうひとつは、あの村の地下。……けど、行ったら殺される」




