休息からの新たな始まり
■ 宿屋「流れ星亭」・深夜
村に戻った彼らは、村外れの古い石造りの宿屋に腰を落ち着けていた。
部屋に灯された柔らかな油灯の明かりが、木の机に並べられた干し肉や温かい野菜スープを照らす。
背中を壁に預けて、火除けたちは湯気の立つマグを片手に、黙ってそれぞれの時間を味わっていた。
「……あの神、“あれ”は人に近かったな」
「怖さもあったが、それ以上に、なんつーか、寂しさがあった」
「俺たち、あいつの願いの続きをやってんのかもな。『見る目』ってやつでさ」
沈黙のあと、ショウが言った。
「このままじゃ足りない。俺たちだけじゃ、見えてることも伝えきれない。だから――」
■ 翌朝・村長屋敷・特別会議室
村長、賢人会議館の代表、火除けの面々が集まる中、ショウは提案を出した。
「教育の場を作りたい。名前は“専門教習舎”でも“応答学館”でもいい。
見る力、考える力を育てたい。村の者だけでなく、旅人、外の者も受け入れたい」
サノも言葉を続けた。
「剣を教えるのも、書を読むのも、同じ“技”だ。
俺たちが変われたのは、見方を変えたからだ。その目を次に渡すべきだと思う」
反対はなかった。
むしろ、すでに一部の村人たちは「異物屋の考え方」を教えてくれと集まり始めていたのだ。
こうして村は、知識と感覚を磨く学びの村へと動き出すことになる。
■ 同時刻・村の外れ・観測塔跡地
その頃、村から離れた丘の上、放棄された古い観測塔に奇妙な人影が集まっていた。
黒いローブ、仮面をつけた数人の男女。
だがその手には古い計器、天文図、そして“ダンジョンの記録”が握られていた。
「……奴ら、とうとう“神域”に触れたか」
「早すぎる。火除けは武を捨て、学を取った。旧き均衡が崩れる」
「いや、今度こそ“彼ら”に接触できるかもしれん。次は我々が、動く番だ」
男の仮面の奥の目が、静かに笑った。
「ようやく、“地上の交渉者”にふさわしい相手が現れたな」
その背後、夜空に浮かぶ星の一つが、不自然に明るく瞬いた。




