「火除けの矛」のメンバーが正式にダンジョン探索に同行する
村が徐々に発展していく、外からも客がやってくるようになった
■ 村の賑わい
朝霧が晴れるころ、村の広場はすでに活気で満ちていた。
果物屋の声、遠くから聞こえる木槌の音、そして笑い声。かつては寒々しかった石畳の広場に、今では色とりどりの露店が並ぶ。
村長の屋敷前では、帳簿を手にした若者が、算盤を使って荷物の出入りを記録していた。
「光る石の首飾り、三つ確認……値は昨日の倍近くになってるな」
「ダンジョン品は今日も出るんだな、へへ、こりゃ稼ぎ時だ」
屋敷の隣にある賢人会議館では、知識層たちが集まり、ダンジョン由来の技術についての検討が行われていた。
鋼鉄と石の重厚な構造、そして時折軋む機械音。その異質な建物も、今では村の一部だ。
「数取り機に反応している水晶があった。恐らく“数”そのものに感応してる」
「新しい現象だ。記録しておけ。異物屋に確認も頼もう」
もはや“異物”は恐れの対象ではなく、村の一部として根付きつつあった。
■ ダンジョンへの招待
その日、村長の屋敷の執務室で、ショウは“火除けの矛”のメンバー数人と向かい合っていた。
「付き合ってくれてありがとな。次は、こっちが見せる番だ」
「つまり、ダンジョンってやつに連れてってくれるんだな」
「そう。ただ、これは遊びじゃない。生き物も出るし、“言葉にならない何か”もある。引き返すなら今だ」
サノは腕を組んで、ぽつりと言った。
「お前に“あるがまま”を教わった。その先が何か、見てみたい。それだけだ」
仲間たちもうなずく。
■ ダンジョン入り口にて
村の外れ。鬱蒼とした林を抜けた先に、それはある。
古代の石と、鉄の枠組みが混ざったような、異様な門。空気は重く、風の音すら吸い込まれる。
「……これが、入口か」
「入口、というより“境界線”だな」
ショウは腰に装備した小型の“起動板”を取り出し、門のくぼみに差し込んだ。
低いうなり音と共に、門がゆっくり開く。
その先に広がるのは、光の届かぬ空間。空気の密度が変わるのを肌で感じる。
火除けの男たちは無言で、だが目は真っ直ぐ前を見ていた。
「お前たちの目なら、ここでも通用する。だが――見るだけじゃなく、感じろ。異物の正体は“感覚”の先にある」
一歩、また一歩と、彼らは境界を越えていった。
異物と伝統、旧来と新しき、矛盾だらけのその先に、何があるのか――
彼ら自身の“目”で確かめる旅が、今始まった。




