表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/64

町の人々のリアクション

貴族との会話があります

城壁の門をくぐると、町の喧騒が広がっていた。屋台の掛け声、馬のいななき、井戸で水を汲む音。土のにおいと、焼き魚の香ばしい煙が混ざる。


ショウたちは中央市場の広場、石畳の一角に荷車を並べた。看板も旗もない。あるのは木箱と、むき出しの品々だけ。だがそれが逆に人目を引いた。


最初に人々の目を奪ったのは、算盤だった。


「なにこれ、石か?」「動くぞ……」「これ、数を数える道具らしいぞ!」


指で珠を弾いて見せると、子どもたちが群がった。ひとりの書記官風の男がじっと見つめてくる。手にとっては戻し、また別のを手にとる。


「この作り……桐材か?金属の軸?これは……どこで作った?」


ショウは口元を緩めた。「北の方にある、特殊な工房さ。質は保証する。百台ある。」


男は目を細めた。「百?……戦争でも始まるのか?」


笑ってごまかすと、隣で村の老婆が小皿に盛った漬物を差し出す。「まぁまぁ、まずこれを食べてみなさいな。」


酸味と旨味に、思わず顔をしかめる町人もいたが、すぐに「もうひとつくれ」と手を伸ばした。保存食としての価値がすぐに理解されたらしい。兵士風の男が数壺まとめて買っていった。


そして、最後に箱の中から取り出された水晶の首飾り。淡く光るそれを見たとたん、ざわつきが走った。


「魔具か?」「いや、ただの飾りだ」「それにしちゃ、光り方が妙だな」


一人の若い女が、ためらいながら手にとる。「これ……冷たい。中に、何かが動いてる……?」


ショウは淡々と答えた。「ダンジョンで手に入れた。詳しくは……わからない。だが、世界にひとつしかない品だ。」


その一言で、周囲の空気が変わった。希少性、それは商人にとって甘い毒だった。


値段の交渉が始まる。最初は手探りだったが、やがて本気の声が飛び交い、銀貨がちらついた。算盤は興味半分、実用半分で売れていき、漬物は兵士と旅人に人気を博した。水晶の首飾りは、最終的に地方貴族の使者が「持ち主の名も含めて記録したい」と言い出すほどの騒ぎになった。


日が傾くころには、荷車は半分以上空になっていた。


「なあショウ、本当にこれ……売れるんだな。」


商人の一人が驚き混じりに言った。


「売れないのは、説明できない物だけだ。売れる物は、“意味”のある物だ。」


ショウはそう言って空になった木箱に腰かけ、空を見上げた。遠く、鳥のように羽ばたく鉄の機体が浮かんでいるような気がした。


この先、貴族に呼ばれる展開や、ダンジョン技術の詮索が始まる


貴族に呼ばれる展開そこでダンジョン技術の詮索



市場での騒ぎから二日後、ショウたちのもとに、黒装束の男が現れた。無言で文を差し出すと、読み書きのできる村の商人がそれを読み上げた。


「ショウ殿 その品と由来について 貴家の使者より聞き及んだ 是非 城館にてお話を伺いたく存ず」


送り主は、町を治める領主代行――クラム・フォン・レント伯。その名を聞いた瞬間、周囲の空気が冷えた。


「……逃げるか?」誰かが言った。


「いや。逃げれば“怪しい”が確定する。行こう。武器は……いらないだろうな」


屋敷の門は高く、重く、警備は厳重だった。迎えに出た従者は表情を変えず、ショウたちを応接の間に通した。絨毯、香の煙、壁には戦勝記念の槍が飾られていた。


そして、部屋の奥。椅子に座る男がひとり。歳は五十手前、鋭い眼差しと、爪ほども笑わぬ口元。これが、クラム伯だった。


「来たか。……座れ」


低い声が室内に響く。


「市場で売られた品々。中でもあの“数取り機”と“光る石”――あれは、どこで手に入れた」


ショウは正直に答える。


「ダンジョンで見つけました。いや、“借りた”というべきか。元は異界の技術、我々には作れません」


「では、ダンジョンに“そのような物”が眠っているのか?」


「はい。ただ、誰でも取り出せるわけではない。運と、多少の“対価”が必要です」


クラム伯の目が細くなった。


「……君は、異物の流入が何を招くか分かっているか? 鉄を知らぬ町に鉄を持ち込めば、秩序が乱れる」


「承知しています。ただ、売るだけで終わる気はありません」


ショウは胸から、一枚の粗末な羊皮紙を取り出した。そこには、簡単な“算盤の使い方”が絵で描かれていた。


「この技術が拡がれば、帳簿も正確に、取引も早くなる。混乱ではなく、基盤を整える力になります」


クラムは黙ってそれを受け取り、目を通す。やがて、口元にわずかな笑みを浮かべた。


「面白い。だが――それをどう管理する?」


「販売ルート、使用者の教育、そして“記録”。すべて私がまとめます。伯の名で発布されれば、混乱も抑えられる」


沈黙がしばらく続いた。やがて、伯は静かに立ち上がり、窓の外を見た。


「ならば、君に任せよう。だが、一つだけ忠告する。――ダンジョンの技術は、夢でもあり、毒でもある。飲み干す前に、その重さを知れ」


「心得ております」


「ならば行け。明日、再び城へ。役人を紹介しよう」


そうしてショウは屋敷を後にした。扉の向こう、商人たちは不安げに待っていた。


「どうだった?」


ショウは軽く息を吐いた。


「――面倒が増えた。でも、チャンスもな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ