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呼び捨てと一種の思い出

「私、餡子2つとクリーム3つ!!」


「僕は餡子1つで」


畑葉さんの分のたい焼きも僕が支払う。


いつも畑葉さんに奢って貰ってるからさすがに申し訳無くなってきた。


「人のお金で買ったたい焼きは美味しいね〜!!」


そんなことを言いながら少し離れたベンチに座って僕よりも先にたい焼きを頬張っていた。




「餡子もクリームも美味しいね〜!!」


ルンルンな気分で頬張る畑葉さん。


リスみたいだ。


頬いっぱいに入れてどんぐりで頬袋がパンッパンのリス。


可愛い。


「...見すぎ」


ふと、そんなことを言われてしまう。


少し睨みながら。


「...畑葉さんの後ろの景色を見てたんだよ」


そう明らかにバレそうな言い訳を呟くように言うと


「ならいいけど」


と騙される。


畑葉さんって詐欺とか簡単に引っかかっちゃいそうで怖い。






「琉叶、」


「何..」


「って、え?」


「名前...何、」


急に下の名前で呼ばれ、戸惑う。


「ちょっと下の名前で呼んでみたいな〜って思って!!」


「ね、私の名前も呼んでみて!!」


それは流石に...


そう気が引けたが心の中の僕に『言え!!言うんだ!!』と強引に背中を押されてしまう。


「.........凛」


自分でも驚くような小さい声。


しかも全然畑葉さんの目を見て言えなかったし。


あぁ、本当に僕ってば───


「____」


ん?


今、何か畑葉さんが呟いた気が...


そう思い、下を向いていた顔を上げるとゆでダコのように顔を真っ赤にした畑葉さんの姿があった。


「...これからも苗字で呼びあおっか」


少し俯いたままの畑葉さんにそう言われる。


「...そうだね」


何だか気まずい空気になってしまった。


いつもみたいに平然になるのかと思いきや、


まさかのガチ照れ。


そんなギャップも相まって可愛いと思ってしまう。








「そ、そういえば明日ってスキー授だね!!」


強引に話を切り出す畑葉さん。


スキー授業?


何のこと?


「もしかしてその顔...」


「忘れてた?」


顔全面に『疑問』を浮かびあげる。


まるで顔そのものがはてなマークになってしまうほどに。


「え、スキー授業?」


「明日?」


「うん、明日だよ?」


『なに豆鉄砲食らった鳩みたいな顔してるの?』と言いたげな畑葉さん。


というかスキー授業なんて何年ぶりだろうか。


小学生以来だろうか?


「古佐くんはスキーやったことあるの?」


「小学生が最後だよ」


「中学はやらなかったの?」


「中学はスノボだったな〜...」


そう。


僕の中学生時代は不思議なことにスキー授業は無く、代わりにスノボ授業があった。


初めてやった時、自分の死を感じて怖かった。


が、意外とすんなり出来て満足。


「スノボ?!」


「いいな〜...」


「何が?」


いいなって何?


スノボが出来てってことだろうか。


「どっちも出来て...」


「私スキーもスノボもしたことない...」


口を尖らせた後、


しょんぼりとした顔を見せる。


「え、無いの?」


「うん」


「何せ冬なんてあんまり好きじゃないし...」


「いや、それはただ単に言い訳な気が...


「でも!!スキー授業ってことは先生が教えてくれるってことだよね?!」


「多分ね」


「じゃあ同じグループに古佐くんも入れてくれるよう先生にお願いしないと!!」


それ当日に言うつもりだろうか...


まぁ、あの担任なら許してくれそうだけれども...




「しかも同じグループだったら転んでこ古佐くんなら助けてくれそうだし!!」


そうおまけのように付け加える。


それに何故か僕は対抗したくなって


「どうしよっかな〜」


なんて言う。


「...意地悪」


それを聞いた畑葉さんは頬を膨らまして拗ねてしまった。












「古佐くん!!それ、何食べてるの?」


さっきからずっと僕に話しかけてきてる...


今日はスキー授業の日で今は移動中のバスの中。


本当は畑葉さんは僕の隣の席じゃなかったんだけど、僕の隣に来た。


元々、僕の隣の席は誰も座らない予定だったから空いてはいたんだけど...


ずっと喋ってる。


「...あげるよ」


前に畑葉さんが桜の花弁チップスを食べているのを思い出して、


急遽昨日の夜に食用の桜の花弁入りのゼリーを作って持ってきた。


畑葉さんを釣るために。


僕は一体何をやっているんだか...


「美味しい!!これ桜じゃん!!」


目をキラキラと輝かせながらこちらを見てくる。


「前に畑葉さんが桜の花弁チップス食べてるの思い出して作ってみた」


そう僕が言うと


「料理出来るの?すごい!!」


と先程よりも瞳の光が増える。


「料理って言ってもゼリーだけどね...」


そう返すと


「ゼリーだけでも充分すごいよ!!」


なんて褒めてくる。


なんかいい気分。


「だって私の家庭科の調理実習見たでしょ...?」


あぁ、確かにあれは酷いものだった。


家庭科の調理実習での課題は『班のみんなと力を合わせてハンバーグを作ってみよう』って感じだったんだけど...


畑葉さんが作ったハンバーグは炭のような真っ黒焦げの何かが出来上がっていた。


あの後、他の班からハンバーグ貰って食べたんだっけ?


「まぁ...あれは酷かったけど......」


「ゼリーは簡単だと思うよ?」


「今度一緒に作ってみる?」


「いいの?」


「うん、いいよ」


「やる!!じゃあこれも約束ね!!」


でもあの真っ黒焦げハンバーグも一種の思い出のようだと思えばいい気がする。

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