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不安と少しの疑問

「古佐くんの方はどう?」


自分のレモネードソーダを半分ほど飲みきった畑葉さんに言われる。


今度は僕の方を狙っているのだろうか。


「...美味しいよ」


「ふ〜ん...」


狙ってる訳じゃなさそう。


そう心の中で安堵の声を漏らした。


と共に


「ちょっとちょ〜だい!」


と言いながら自身のストローを僕のレモネードに入れて飲んできた。


『急に近づいたりするのやめて欲しい』って前言ったばっかなのに。


意味が無かったのかもしれない。


「苦い...」


そう言って自身のレモネードソーダにストローを戻す。


苦酸っぱい、これがいいのに。


そう思いながら口から笑いを零す。


そろそろ味変の時間かも。


そう思い、僕はレモネードを持ってキッチンへ行く。


キッチンで蜂蜜を...


と思ったが、『畑葉さんも欲しがるかも』と思って蜂蜜とガムシロップをキッチンから持ち出す。




「どこ行って───」


「あ、蜂蜜だ!!」


案の定、畑葉さんは僕の持っている蜂蜜に気づき


「私も!!」


なんて言う。


「どっちがいい?」


「蜂蜜とガムシロップ」


僕は断然蜂蜜だけど...


畑葉さんも蜂蜜と言うだろう。


そう予想していたのにも関わらず、


畑葉さんが言ったのは


「ガムシロップ!!」


だった。


「え、」


「何?」


「本当にガムシロップ?」


「そうだけど...ダメ?」


いや、ダメでは無いんだけれども...


「まぁいいや、はい」


困惑の気持ちを抑えながら畑葉さんにガムシロップを2つ渡す。


「量ってどんくらい入れてもいいの?」


「自分好みでいいと思うけど」


そう僕が言うと『ふ〜ん...』と言いながら自身のレモネードソーダにガムシロップを " 5つ " 入れた。


「ん〜!!甘くて美味しい...!」


そんなに入れるんだったら蜂蜜でもいいじゃん。


そう思いながら僕は自分のレモネードに少しの蜂蜜を加えた。


苦味が少し和らいでとても美味しい。


甘さの後に酸っぱさが来て風ひとつ無い真夏の日に涼しい風が吹いた時のようだ。


さわやかに、


口の中で、


溶けていく。


そんな時、どこからか蛙の合唱やコオロギ達のオーケストラの音色が聞こえてきた。


どこかで発表会でもやってるのだろうか。


「儚いね」


ぽつりとそんな声が聞こえ、思わず


「何が?」


なんて返事してしまう。


『儚い』時たま畑葉さんが口にする言葉。


何か意味がありそうに思えるが、


全く分からない。


「今の時間が」


「儚い」


『今の時間』?


やっぱり畑葉さんは時々、


僕が理解し難いことを言う。


僕の地頭がもっと良かったら意味が分かったのだろうか。


「...私って人間じゃないのかなぁ」


「え?」


「そんなことは──」


「古佐くんはどう思う?」


反射的に出た言葉を遮られる。


『畑葉さんは人間か』そんな疑問が頭を駆け巡る。


そして先程の畑葉さんの問いかけが何度も頭に響く。


それのせいか僕は何も言うことが出来なかった。


『畑葉さんは人間だよ』とも


『畑葉さんは人間には見えないかも』とも。


何も、言うことが出来なかった。


僕の中で『畑葉さんは妖の類なのかも』と何度も思ってしまったからだろうか。








その夜、何だか寝付けなくて。


布団で寝てる畑葉さんを起こさないようにベッドを出る。


が、畑葉さんの姿は無かった。


もしかして僕が『人間だよ』って言わなかったから消えてしまったのだろうか?


そんな不安が何個も思い浮かぶ。


それでも『多分トイレに行っているだけだ』とか『散歩にでも言ってるんじゃないかな』とか。


自分自身を落ち着かせる言葉も中にはあった。


だけどそれよりも不安の方が大きくて。










トイレに行ったが、電気は付いていなかった。


だから多分、トイレには居ない。


玄関に行ったが、靴は無かった。


散歩に行っただけならいいんだけれど。


何だか嫌な予感がし、靴を履いて外へ出る。


も、畑葉さんの居場所など分かるはずもなく、少し歩いては立ち止まる。


を繰り返しながら。


畑葉さんの居る場所...


「あ、桜の木!!」


深夜なのに大きい声を出してしまう。


だけど僕にはそんなことを気にしている余裕も無く、桜の木へと向かう。




案の定、畑葉さんは桜の木の足元の突っ立っていた。


「あれ、古佐くん?どうしたの?」


畑葉さんの姿を見て、


声を聞いて、


安心したのか僕の視界は歪んだ。


「ど、ぇ...どうしたの?!」


「なんで泣いてるの...?」


涙を隠すため、少し俯くと畑葉さんの困惑の声が聞こえてきた。


見たらダメだ。


今見たら多分、もっと溢れてくる。


そう涙を我慢していたが、


気持ちは我慢できず、


気づけば僕は畑葉さんを抱き締めていた。


「古佐くん?ねぇ、本当にどうしたの?」


「悪夢でも見たの?」


そう言いながら畑葉さんは抵抗しないで僕の頭を優しく撫でた。


「うん...」


悪夢を見た。


そうか僕は悪夢を見たんだ。


きっとそうに違いない。


だって畑葉さんが居なくなるなんて有り得ない。


悪魔が僕にイタズラをして悪い夢を見せていたんだ。


「そっか、悪夢か〜...」


「悪夢ならしょうがないね!!」


「さっ、一緒に帰ろ!」


情けない姿を見せてしまったな...


そう思ったが、


同時に畑葉さんはここで何を思いながら、


何をしていたのだろうか。


と、そんな疑問が浮かんだ。

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