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チラシの裏

UFOの話


 怪民談義の皆様、こんばんは。

 今年も納涼企画を開催してくださり誠にありがとうございます。

 毎度に性懲りもなく投稿させていただいております、犬が西向きゃ尾は東です。名前が長ったらしかったら適当に略してください。


 さて、これまではどこか怪奇なお話を投稿させていただきましたが、今回は少し毛色を変えたお話を……。

 というのも、実をいえば、僕は昔にUFOを見たことがあるのです。

 まあ、UFOといっても、空飛ぶ円盤を見たとかではなく、unidentified flying object、未確認飛行物体という原義にもとづく記憶です。


 小学生の頃ですね。五年生くらいだったと思います。

 人数が少ない田舎の小学校あるあるだとは思うのですが、季節ごとに、例えば地区水泳大会に向けた水泳クラブ、地区陸上大会に向けた陸上クラブといったクラブ活動を学年全員が強制参加させられるという恒例行事がございます。


 そのときは陸上クラブに参加していたので、おそらく秋口のことでした。

 夕方です。

 その日のクラブ活動も終わろうという頃合い。

「今日も終わりだ」「家に帰れる」と弛緩した空気が漂うなか、僕は何かに導かれるように空を見上げていました。

 普段は黄金色の空が、その日はいやに真っ赤だったことを覚えています。


 校庭のネットの向こう、西の峰に夕陽がじりじりと沈んでいく。

 それ自体は、毎日、見慣れているはずの景色。


 ところがその日の、その時だけは、そこに異物がありました。


 金色に輝く細長い何か。


 その棒状の何かは、どこか横合いから視界に入ってくると、しばらく宙空で停止していました。

 そうして、それを確りと認めた僕が「あっ」と思ったと同時に下降します。そのままスゥーっと夕陽の中へと消えていきました。

 真っ赤に燃える夕陽と共に山の峰へと姿を消した、何か。


 興奮した僕は、隣の友人の肩を叩き、空を指さして「今の見た!?」

 けれど、彼は怪訝そうな顔で首を振ります。


 おかしいな、こいつも視界に入っていておかしくないはずなんだけれど……。

 そう思いながらも、僕は周囲の学友たちへと次々に聞いて回りましたが、結果としては他に誰ひとりとして目撃した者がいませんでした。


「きっとそれは人工衛星か隕石だよ」と賢しげな友人に言われますが、しかし、たしかに僕はあの飛行物体が「停止」して、更に90度以上の角度で「方向転換」している様子を見ているのです。


 それは明らかに隕石などの軌道ではなく、また飛行機の挙動でもありません。当時に僕が住んでいた場所は、別に近所に自衛隊や米軍の基地があるわけでもないので、オスプレイなどの機体でもないし……そもそも当時は未だ日本でオスプレイの運用はされておりませんでした。


 いったい、僕が目撃したものは何だったのか。

 気になって仕方がない僕は、帰宅後もインターネットで隕石や人工衛星の情報を検索したり、翌日には新聞の記事を端から端まで確認したりしました。


 ところが、やはり、どこにも関連するような情報はありません。


 そのうえ、周囲は親兄弟、友人もふくめて誰ひとりとしてこの話題に関心を示さないのです。


 こんなにも不思議な話なのに!


 おかしな感じでした。

 とくに普段は興味を持つだろう嗜好の友人すら、この話題にだけは見向きもしないというのは、どういう了見なのだろう。


 釈然としないまま、しかし結局、僕は答えを得ることなく成長し、今に至ります。

 不思議な、正体不明の飛行物体を見たことがある……そんな、ただそれだけのお話でございます。


 ところで当時、科学大好き少年だった僕は日常的に研究ノートをつけていました。

 その内容は、水槽で偶然発見した名称不明な水生生物の生態観察だったり、子供の妄想染みた発明アイデアのメモだったり、図鑑や辞書の引用だったりと雑多なものでしたが、このとき、たしかに僕は目撃した「UFO」の記録をそこに残していました。


 それは目撃したときの場所、時間、周囲の状況などの詳細な記録で……更にはUFOが山の峰の何処の箇所に消えていったかまでスケッチしていたはずでした。


 今回にこのお話を語るにあたり、僕はまずこの研究ノートを探しました。

 しかし、どういうわけだか見つかりません。


 手元に無いのならば、実家にあるはずだ。そうだ、机の横のあの場所に仕舞っていたはずだ。……そう思い至った僕は実家へと連絡をしたのですが、LINEのビデオ通話越しに確認すれば、数年ぶりの部屋はだいぶ様変わりをしていました。

 なんと、知らぬ間に机ごと私物が消えている。

 どうにも、親がどこかに片してしまったようです……ついにノートの行方はわかりませんでいた。


 本来ならば当時のノートの画像とともにお話したかったのですが、そのような事由により、今回は記憶を頼りに記述しております。

 もしやすれば記憶間違いの部分があるかもしれないことを、最後にお詫びいたします。


 ところで、そんな実家の周囲では、最近に黒スーツ姿の男たちが目撃されたとかさなかったとか……。


 このお話は以下の番組(後編)で取り上げて頂きました。

 怪文化追求サークル「ワニザメ党」の方々が主催されるラジオです。バックナンバーも豊富ですので、怪しいものにご興味がある方は是非一度ご視聴どうぞ。


【納涼企画】怪民談義・髏 #19「みんなで怪民座談怪SP~2023~(前編)」

(https://www.youtube.com/watch?v=DPPnTYMmFuU&t=28s)


【納涼企画】怪民談義・髏 #20「みんなで怪民座談怪SP~2023~(後編)」

(https://www.youtube.com/watch?v=2jqsmKo8uRo)

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