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第813話 装備補給の違い

813


「「ち、地球日本の勇者め」」

「「サメはいやだあ。いやなんだあ」

「「どうしてパニック映画みたいなことになったんだ」」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたがサメを模した水の大剣で戦闘ボートを次々に沈めるや、テロリスト団体〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟の戦闘員達も心が折れたのだろう。

 前線で奮闘する河童の傭兵、戸隠とがくしサユリや、なんとか規律を保とうとする穏健派指揮官の制止も聞かずに身勝手な逃亡を開始。

 中には、蛇糸で操っていた屍体人形をチリガミでも捨てるかのように放置して川へ飛び込み、泳ぎながら逃走を始めるものまで現れた。

 

「あれ、テロリストのパトロール船には救命胴衣や非常用脱出ボートがまったく用意されていない。他の武器も防具も見るからにボロボロだ」


 桃太はその異様な光景を見て、敵が消極的だった理由に気づき、思わず声をあげた。

 すると、彼が左手で掴んだ鳥型の式鬼から、レジスタンスを率いるキツネ顔の式鬼使い、離岸亜大りがんあだいの声が聞こえてきたではないか?


「出雲さんは、いいところにお気づきになられやした。必要なものを必要なだけ用意するのは、組織が潤滑じゅんかつに動くうえで必要不可欠でやす。現場調達は補給において最も重要な側面ですが、それだけに頼った軍隊などものの役に立ちません。〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟のパトロール船団が、戸隠サユリというエースをかかえながら、無様をさらした敗因はまさにこれでやんす」

「そうか、そうだったのか」


 桃太は、先日まで参謀役として同行してくれた芙蓉イタル、そしてクマ国代表のカムロが、…… 団体〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟の補給線を断つことを念頭に戦っていたことを思い出す。


「俺達も輸送船を潰したり、輸送砦からぶん捕ったり、色々とやってきた甲斐があった」

「満足な装備ももたずに、肉壁扱いされているテロリストどもにゃ同情しやすがね」


 桃太は自分たちの努力がついに結ばれたのかと感慨深げに微笑むも、式鬼から聞こえる亜大の語調が少し変わった。


「ま、我々地球日本の冒険者だって笑えたものじゃない。特に最大手……八大勇者パーティの大半は、物分かりの悪い上司が物資不足を精神論で乗り切ろうとして、下っ端に押し付ける悪癖が蔓延まんえんしていた。海外やら活動家やらとのつきあいや、幹部の利権確保のためにでっち上げられた部署を肥え太らせるのは論外でやんすが……、必要不可欠な予算ひとつ出さずに作業効率改善かりのこうりつをあげろだの、生産性向上もっとたくさんとってこいだのと抜かすのは、指導者が自身の無能を公言しているも同然でやんす」

「それは、そうかもしれませんね」


 桃太は亜大の言及から、これまで戦った八大勇者パーティを思い返してみたが、なるほどその通りだった。

 三縞凛音みしまりんねが率いた〝C・H・Oサイバー・ヒーロー・オーガニゼーション〟は、佞臣ねいしんであった黒山犬斗くろやまけんとの専横で指揮系統がぐちゃぐちゃになっていたし……

 四鳴啓介しめいけいすけがどんぶり勘定で運営していた〝S・E・Iセイクリッド・エターナル・インフィニティ〟は部下が略奪を働いて、民意を敵に回したし……。

 七罪家と〝K・A・Nキネティック・アーマード・ネットワーク〟は犯罪行為こそ闇に隠して長年明るみにでなかったものの、実態はまさにパワーハラスメントの権化といわんばかりの悪習がまかり通っていた。


「現場のことをわかってくれていたのは、一葉家と〝J・Y・Oジュディジャス・ヤング・オーダー〟を牛耳っていた朱蘭の姐さんや、五馬家と〝N・A(ニュー・アカデミック)G・A(グローリー・エイジ)〟に担がれた碩志ひろし坊っちゃんくらいでやんすねえ」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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勇者パーティ上層部「「我々は有能だったからこそ上層部にいる!そしてエースに必要な物資他を集める事こそが大前提!つまり、我々に全てを集めるのは間違っていない!」
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