第812話 レジスタンス船団、反転攻勢をかける
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「ああ、せっかく仇のオウモに繋がる手がかりと出会えたのに、なんでこうなったマチョ」
異世界クマ国で百万人を殺傷したテロリスト団体〝完全正義帝国〟に雇われた河童の傭兵、戸隠サユリは、自らの不運をなげいた。
雇い主であるパトロール船団が、レジスタンスとの交戦で、いともたやすく総崩れとなったことは、彼女にとっても大きな誤算だった。
「こうなったら、黒騎士だけでも倒して、氷神アマツミカボシの宝剣がどこにあるのか、白状させるマチョ!」
「だから、宝剣なんてものは、知らんと言っている!」
サユリは巨大化させた両腕で鉄線を雨あられと投げつけつつ、丸太のように膨らませた右足で蹴りつけるも、黒騎士はホバー装甲を生かして、ふわりと避ける。
「そんなはずはないマチョ。〝前進同盟〟で、お前と石貫満勒が持っているのを見た者がいるんだマチョ。それとも宝剣に足が生えて、神宮から勝手に歩いていったとでも言いたいマチョか?」
「うちには刀剣なんて山ほどあるんだ。見間違いだろう!」
今度は黒騎士が鎧の肩パーツから電撃を発射しつつ、タックルを見舞うも、サユリの怪力でいなされる。
「戸隠さんがああも気を吐いているからこそ、なおさら他の弱さが目立つなあ」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太ら本隊が囮となって戦っている間に、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨が率いる別動隊が側面からの奇襲に成功。
両者の挟撃によって〝完全正義帝国〟の大型船四隻をまたまたく間に沈めた。
「サーメッメ。笛を吹いて応援するよ!」
「「うおおお、姫の演奏で勇気百倍。テロリストどもよ、我らが怒りを思い知れ!」」
紗雨が竹製の横笛、いわゆる龍笛と呼ばれる和笛を吹いて戦士たちの力を引き出す祝曲を奏でるや……、レジスタンスメンバーは、銛や曲刀を手に獅子奮迅の活躍を見せた。
「ひいいい、くるなああ」
「ちょっとでも近づいてみろ。ぶっころすぞおお」
テロリストの指揮官達もまた、自ら槍を手に迎撃しようとするが、へっぴり腰では勝負にならない。
桃太が陣頭に立つレジスタンスの前衛船二隻と、紗雨が指揮する奇襲船二隻に一方的に蹴散らされ、ただただ怯え惑っている。
「そこは、この、てんっさい指揮官たる僕の手際を褒めるべきでやんす」
レジスタンス側の船団を率いるキツネ顔の式鬼使い、離岸亜大がボケ役の如くに自画自賛したため、桃太は一瞬「天才ではなく天災では?」とツッコミを入れようとしたが、実際に指揮が素晴らしかったので素直に称賛した。
「俺たちも戦い始めた頃はけっこう苦労しましたから、亜大さんの巧みな指揮は尊敬します。このまま掃討に加わります」
「また式鬼を一羽送るんで、移動の助けと無線機代わりに使ってくださいでやんす」
「ありがとう。さあ、テロリストども、今日のシャークブレードは血に飢えているぞ!」
桃太は左手で嘴の長い鳥型の式鬼につかまりつつ、衝撃波を足にまとわせて川の上をはしり、紗雨が術で作ってくれた、サメ型の巨大な水刃を右手でふるって小型船を追撃。
「「さすがは、カムロ様のお弟子さん」」
「「紗雨姫とは以心伝心なのか」」
「「見ろよ、大勢の兵士に囲まれても、ものともしない」」
桃太は、レジスタンスメンバーの声援に押されるように、空飛ぶ屍体人形はもちろん、テロリストの雑兵をちぎってはなげ、ちぎってはなげと船からまとめて叩き落とす。
「「ち、地球日本の勇者め」」
「「サメはいやだあ。いやなんだあ」
「「どうしてパニック映画みたいなことになったんだ」」
あとがき
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