第810話 前進同盟のアリバイ!?
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「傭兵団〝華の刃〟副団長、戸隠サユリは私が相手をする。出雲達は他の船をたのむ。戦況は悪いが、建速さん達の乗った奇襲船団がやってくるまで、あと少しだ。持ち堪えてくれ」
「「了解」」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太と入れ替わるように、漆黒のフルプレートアーマーを着込んだ黒騎士は船から川へ飛び込んだ。
「戦闘機能選択、モード〝一目鬼。状況開始!」
黒騎士は兜の奥で輝く単眼の赤い視覚素子を光らせつつ、背部に背負ったエンジンパーツを回転させる。そうして、オルガンパイプめいた排気口から黒い煙をたなびかせながら、足元から熱風を吹き出してホバー移動でヒスイ側の川面を走り出す。
「むっ、黒騎士。マチョ・ガトリングを喰らうマチョ! マチョマチョマチョ!」
一方、テロリスト団体〝完全正義帝国〟に雇われた亀の甲羅を背負った緑髪の河童少女、戸隠サユリは、肩と腕を丸太のように巨大化させ、怪力で砂利を掴んでぶんぶんと投げつけてきた。
その威力は、川縁の木々や、操り手を失った屍体人形に大穴を空けるほどであり、機関砲に例えるに十分な破壊力を持っていた。
「なるほど、凄まじい威力だな。だが、我が友の手裏剣を打ち破るために、私も修練を重ねている。雷の網にはこういう使い方もある」
黒騎士は進行を阻む弾幕に対し、肩パーツから空中に電撃網を射出して受け止め、空気を震わせるほどの電撃を放って石つぶてを焼き落とす。
「えーい、小賢しいマチョ。お前も戦士なら拳ひとつで勝負するマチョ」
サユリは自慢の攻撃を無力化されて頭にきたのか、川面に仁王立ちするや、丸太のように膨らませた自慢の腕で力こぶをつくって挑発したが……。
「わかった。うなれ鉄の拳。ロケット拳骨!」
黒騎士は電撃網を囮に、遠隔操作可能な右の義腕を飛ばしてサユリの後背部に軽快なツッコミを入れて、水中へ引き倒した。
「ゴボゴボ、そういう意味じゃないマチョ!」
「ちゃんと拳で勝負したじゃないか……」
黒騎士の冷静かつ的確な攻撃と、ロジカルなツッコミが、サユリの怒りをさらに煽ったのはいうまでもない。
「そういうところが気に入らないんだマチョ。さっき船の声が聞こえたけど、なあにがなにもしていないマチョか。お前と石貫満勒は、〝氷神アマツミカボシの宝剣〟窃盗の最重要容疑者だ。なにより今年の七月に、オウモがマチョ達の住んでいたモムノフの里を焼き払ったこと、忘れたとは言わせないマチョ」
「私はなんとか神の宝剣など知らないし、我々が里を直接焼き払うなどありえない」
サユリは怒りをぶちまけながら巨大化させた右腕で殴りかかるものの、黒騎士は左の義腕で巧みに捌きつつ接近。
「地球日本を電気異常で震撼させた四鳴啓介の乱が終わったのが、六月の終わり。その時、オウモさんが遠隔通神で宣戦布告めいた暴言を吐いてしまったから、それからしばらくはクマ国に入るたびに代表のカムロに狙われたんだ」
「マチョオオオ!?」
黒騎士は自動操縦で戻ってきた右の義腕を肩部にとりつけるやサユリの腕をつかみ、彼女の体幹を崩しながら器用にぶん投げる。
「拠点だったホバーベースも、あの牛仮面が放った〝生太刀・草薙〟で車体に大穴が空くわ、雷と火の刀で屋根を燃えかすみたいにされるわ、それはもう酷い目にあったんだ。セグンダさんがいなければ、間違いなく全滅していたぞ」
どうやら、桃太達も苦戦したビキニアーマーの女戦士が囮となって、なんとかカムロから逃していたようだ。
「オウモにはアリバイがあるって、お前と同じことを、カムロ様やクマ国政府も言っていたマチョ。でも、この目で見たのだから確かなんだマチョ」
サユリは再び立ち上がり、全身の筋肉を膨らませる。
「私たち〝前進同盟〟が清廉潔白とは言わん。しかし、燃える火よりも明らかな冤罪をかぶせられては困る」
「えーい、嘘つきのむくいをうけろ。フルパワーでぶっ飛ばすマチョ!」
あとがき
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おまけ
トータ「鉄塊みたいな妖刀」
サメ子「今度は勝ちたいライバル」
黒騎士「満勒と漫才してる相方」
詐欺師「近づきたくないクソガキでやんす」
この場にいる誰もが、彼女を宝剣などと思っていないのである(⌒-⌒; )
??「し、知らない名前で呼ばれているでちいいっ!?」
おまけに当人も?▽?





