第806話 黒騎士と式鬼使いの連携
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「「「ぎゃあああっ」」」
「「GAAAAA!?」」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太は、キツネ顔の式鬼使い、離岸亜大とのタッグ技で巨大な水竜巻を生み出し……。
異世界クマ国で百万人を殺傷したテロリスト団体、〝完全正義帝国〟の指揮官が乗る戦闘ボート数十台と、彼らが操る空飛ぶ屍体人形〝兵士級人形〟数百体をヒスイ河でまとめて撃破した。
「おお、さすがは、地球日本の勇者!」
「即席で亜大様とのタッグ技を作られるとは!」
レジスタンスの仲間達が歓声をあげる一方、テロリスト達はショックのあまり大混乱に陥っていた。
「はやく、次の屍体人形を前へ向かわせろ」
「いやだ、お前がいけ」
テロリスト達は攻めているうちは強気になっていたが、守りに回るや否や弱腰になり、内輪揉めで作戦行動に支障をきたしはじめていた。
「トー、出雲。第二陣の相手は私がする。離岸さんと前衛を務めてくれるのは助かるが、まずはボートから落とされたレジスタンスメンバーの救出を急いでくれ」
「了解だ。行ってくる!」
さらに黒騎士が狙撃を開始。
戦場をマズルフラッシュが照らし、銃撃音が響き渡ったことで、テロリスト達のパニックは最高潮に達した。
「「びやああああ」」
「「もういやだ。にげる、にげるぞおお」」
こういう時、別方向に逃げる方がまだしも命を拾えそうなものだ。
「本船に辿り着くのは俺だ。お前が盾になれ」
「偉大な革命家であるオレの命をなんだと思っている。お前こそ盾になれ」
しかし、自分勝手なテロリスト達は己のみを優先するあまり、同じ逃亡コースを選んで、身内同士で足を引っ張りあっていた。
「待ってくれ。仲間同士で争っている場合じゃない。ここは、協力して二手に分かれる方が」
「「うるせえ、死ね」」
「なん、で……」
ごく一部の穏健派が、他の仲間を諌めるものの、逆上した過激派達に斬りつけられ、ボートから蹴落とされる始末だ。
「見るに耐えない。ロケット拳骨で電気網を射出し、まとめて捕える。亜大、電撃で追撃してくれ!」
「あいよ。尾黒狗、ありったけの雷をご馳走しろ」
今度は、黒騎士と亜大のタッグ技が炸裂。
「くらえ、黒雷封陣!」
「普段はむっつりなのに、ノリノリでやんすね」
「「ぎいやああああ」」
黒騎士が空飛ぶ腕でテロリストの船を網で捉え、亜大の式鬼である尾が黒い犬が電撃をあびせて麻痺させる。
「なんてことをっ。マチョ式ウォーターカッタあああ!」
この時〝完全正義帝国〟に雇われた、亀甲羅を背負う河童の傭兵少女、戸隠サユリが川の水を吸い込んで迎撃を試みるものの……。
「情報は全てを解決する。初見殺しには対応できなくとも、二度目はわかっているから、防げるんでやんす」
「不本意ながら同感だ。くらえ、雷撃っ。あの泥棒サメ、ごほん。天敵対策に編み出した技を見るがいい。水雷発破!」
亜大が操る式鬼・錐嘴鳥がつんつんと膨らんだ頬を突き刺し、黒騎士が肩部パーツから足元の水に雷を放射して邪魔をする。
「蒸気鎧も式鬼も格好いいなあ」
桃太は二人の支援もあって、無事に川面に投げ出された友軍の元へ到着した。
「助けに来たよ、つかまって」」
「あ、ありがたい。助かりました」
「水の上を走れるなんて、さすがはカムロ様の直弟子……」
かくして桃太はひっくりかえったボートを戻し、怪我人を乗せてジャンク船まで後退した。
「マチョオオオ。パトロール隊の任務は、転位門の防衛。〝前進同盟〟以外は、とっとと帰るでマチョ」
一方、サユリは巨大化させた腕で黒騎士と亜大を狙って砂利を投げ、あるいは口からウォーターカッターを吹き出していたものの、無防備なレジスタンスに対しては追撃していなかった。
(傭兵団〝華の刃〟。できれば、戦いたくない相手だ。なんとかこちら側へ引き抜くことはできないだろうか?)
あとがき
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