第805話 桃太と亜大の共闘!?
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「傭兵団、〝華の刃〟。強いのは、団長の志津梅さんだけじゃなかったのか!?」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太は、朝の太陽が照らすヒスイ河の戦場で……。
亀甲羅を背負った緑髪の河童少女、戸隠サユリが、レジスタンスメンバーの乗った戦闘ボートをまたたく間に転覆させる光景を見て、慌てて川の中へ飛び出した。
「ええ、僕ら〝前進同盟〟への復讐なんぞとうそぶき、〝完全正義帝国〟なんて極悪非道のテロリストに味方する裏切り者ながら、実力は確かです。〝式鬼・錐嘴鳥〟で援護しますよ。掴んでください」
「離岸さん、助かる」
「GA!」
桃太は、キツネ顔の式鬼使い、離岸亜大が操る、槍のように嘴が長い鳥型の式鬼を左手で掴んで浮遊し、両足に衝撃波をにまとわせることで、川面の上を水切り石のように跳躍しながら前へ進んだ。
「マチョオオオ! 部外者が邪魔するなマチョ!」
サユリは桃太を新たな敵と判断したのか、肩と腕を再び巨大化させて、鉄線を雨あられと投げつけてくる。
「まずい、味方がやられる」
桃太は器用に避けながら、河童娘の攻撃から友軍を守ろうと走りよったものの……
「た、助けてくださーい」
「このままだと溺れてしまいます」
意外なことに、船から投げ出された味方は、特に攻撃されることはなかった。
水風船花と呼ばれる空気で膨らむ花を利用した救命胴衣のおかげで、川面にぷかぷかと浮いているだけだ。
「戸隠さんは、ボートは沈めるけれど、直接トドメをさしにはいかないのか?」
「まあ、〝華の刃〟と直接戦った連中は、あんなに忌み嫌われているわりには、思ったより善人だったとボヤいたり、〝完全正義帝国〟の殺戮から逃してくれたという話も聞いたりしたでやんす」
錐嘴鳥を通して、亜大の声が聞こえる。
つまるところ、傭兵団〝華の刃〟が殺意を向ける相手は、仇と憎む〝前進同盟〟の構成員にかぎられているらしい。
「〝完全正義帝国〟に雇われたといっても、商売相手は、長老たちに人質を取られて協力を強いられていた穏健派が多かったようでやんす。ま、結局は、戦うしかないんでやんすがね」
亜大の指摘は正しい。サユリはレジスタンスを積極的には狙わないが――。
「「二本足の獣は死ねええ!」」
「「GAAAAAAAA!!」」
戦闘ボートに乗った〝完全正義帝国〟の指揮官は、空飛ぶ天使を模した屍体人形、〝兵士級人形〟を操り、川へ投げ出されたレジスタンスメンバーにトドメを刺そうと襲いかかってきた。
「ああ、もう世話が焼けるでやんす」
亜大が操る式鬼・錐嘴鳥が名前の如くに鋭くのびたクチバシで屍体人形人形を突いて応戦する。
たとえ敵の一人が好戦的でなかったとしても、戦場に安全圏などあるはずもないのだ。
「離岸さん。攻撃用の羽をばらまいてください」
「あいよ」
亜大が操る錐嘴鳥が尾羽の一部をナイフのように尖らせて射出するや……。
桃太はポケットに準備していた衝撃波をこめた石つぶて複数個を投げつけて、衝撃波の渦を川面に作り出し、刃のごとき羽の舞う水竜巻を発生させた。
「協力技・手裏剣〝羽嵐〟って感じかなっ」
「うお、まさかのタッグ技になっちまったんでやんす!?」
桃太の臨機応変な攻撃に亜大は驚くものの、即席で作り上げた大技ながら、その効果は絶大だ。
「うわっ、羽がささるっ。いたいっ」
「裂かれて人形がおちる。俺もおちるううう」
「水でボートがしずむっ。お、おたすけえええ」
二人が力を合わせた結果、〝完全正義帝国〟の指揮官が乗った前線のボートを屍体人形もろともに破壊。乗員全員をヒスイ河のど真ん中へと叩き込んだ。
「「「ぎゃあああっ」」」
「「GAAAAA!?」」
あとがき
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