第801話 友軍救援を目指して、出発
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「私や満勒達、〝G・C・H・O・〟の仲間が、いざ城の本丸に攻め込むや……。総大将の六辻剛浚はクーデター軍の同志そのすべてを囮として使い捨て、たった一人でクマ国に逃げ去った。そして、持ち逃げした財貨を〝完全正義帝国〟に売って地位を得たというわけさ」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太は、黒騎士からクーデター軍の末路を聞いて、思わず胸を抑えた。
桃太が討ったもう一人の大将格、元八大勇者パーティ〝K・A・N〟の代表でありながら、テロリストの首魁に堕落した七罪業夢もまた、たいがいな悪党だった。
しかしながら、業夢には悪党なりの信念があり、部下に対する愛情もあり、冒険者組合草創期から戦い続けた確固たる実力もあった。
その一方で、クーデター軍を率いるもうひとりの首領であった、六辻剛浚の動向はひたすらに醜悪だ。
大義なく、情愛なく、器量もなく……、まさに恥知らずを絵に描いたようなゲスムーブであり、それゆえに常人の想像を超えたのかも知れない。
「私は石貫満勒や、共に戦った〝G・C・H・O・〟の戦友たちを代表し、今度こそあの恥知らずとのケリをつけたい。ガッピ砦へ向かう間にも様々な危険が待ち受けると思うが、出雲と紗雨ちゃんも同行してもらって構わないか?」
「危険は今更だよ。孝恵校長からもクーデター軍の対処を頼まれている」
「サメエ。紗雨ももちろん桃太おにーさんについていくサメエ」
三人ががっしと手を重ねる中、仲間はずれになった亜大が、ぶんぶんと手を振った。
「出雲桃太さんや、若者同士で群れるのもいいですが、ここに頼れる大人がいますよー。冒険者パーティ〝W・A〟の幹部とかに取り立てると役立つでやんすよー」
「サメ?」
「は?」
「……なんでもないでやんす」
亜大は剛浚よろしくちゃっかり地位を得ようとしたものの、桃太の脇を固める紗雨や黒騎士から睨まれてすごすごと引っ込んだ。
「みんな気をつけて。いってきます」
そうして桃太達は、姿が見えなくなるまで手を振り、あるいは頭を下げるジュシュン村のレジスタンスに見送られ、ダブルカヌーを四隻の船団に横付けして共に向かった。
「「いってらっしゃい。ご武運を!」」
――
――――
それから、三日の間。
桃太達は、四隻のジャンク船で無数の転位門をくぐりながら、〝完全正義帝国〟の勢力圏であるコウナン地方北部を縦断した。
そこで桃太と紗雨は、亜大の意外な側面を知ることになる。
「そういうわけで協力して欲しいでやんす。これはお土産の食料でやんす」
「ありがとう、助かります。うちから出せる人員はこれだけですが、大丈夫ですか?」
「もちろんでやんす。共に平和なクマ国を取り戻しやしょう」
亜大は、ガッピ砦救援に必要な戦力を拡充するため、道中に隠れ潜むレジスタンスのキャンプを訪ねて、戦闘員を借り受けていた。
その交渉材料として、船団に積み込んでいた様々なお土産を持って交渉に臨んだのだが、釣具や足バサミといった狩猟道具から、食料、衣類に毛布といった生活必需品、タバコや茶といった嗜好品まで、求められる物資をの大半を用意できていた。
「おどろいた。船にこんな大量の荷物を積んでどうするんだと思ったけど、ちゃんと意味があったのか」
「準備万端で、びっくりなんだサメエ」
意外や意外、黒騎士が認めたとおりに、亜大は有能だったのだ。
「離岸さんって、けっこう頼りになるんですね」
「見直したんだサメエエ」
あとがき
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