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第798話 桃太と亜大の因縁

798


「あーっ。そういや昔のバイトで家出して、物知らずにも危険な反社組織に入ってしまった女の子を、親族の頼みで保護しようとしたら、物知らずなクソガキにからまれた、みたいなことがあったかも知れないなあ」

栄彦はるひこさん……。俺の知るその子の親族からは、そんなことは聞いてないなあ。だいたい女の子一人保護するのに、式鬼なんて必要かな?」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたは、いいかげんな返答を聞いて目に闘志を宿し――。

 キツネ顔の〝式鬼使い(デーモンマスター)〟、離岸亜大もまた敵意もあらわに、式鬼を封じたを隠しているだろうポケットに手を突っ込む。


「すまない。出雲も亜大も、ここは私の顔に免じてひいて欲しい」


 一触即発となったまさにその時、漆黒のフルプレートアーマーを身につけた正体不明の男、黒騎士が二人の間に割って入って力づくで距離をあけた。


「黒騎士……」


 桃太は、かつて亡き親友、呉陸喜くれりくきの妹である陸羽りうを守るため、亜大と交戦した時のことを思い出す。

 当時の陸羽は兄の死の真相を探ろうとして、八大勇者の一人、四鳴啓介しめいけいすけに騙され、勇者パーティ〝S・E・Iセイクリッド・エターナル・インフィニティ〟に取り込まれていた。


(あの後、陸羽ちゃんは、〝蛇髪鬼へびかみのおにゴルゴーン〟に改造されたり、散々な目にあったんだ。それを予期していたならば――、黒騎士として蘇ったけれど、姿を隠さなくてはいけないリッキーが、外部勢力に保護を依頼した可能性はある、か)


 もっともその場合、陸羽を襲う必要なんてまるでないはずなのだが……。

 亜大は毒瓶を笑顔で集めるような男だから、手段を選ばなかったのか。

 あるいは上司である一葉朱蘭いちはしゅらんの意向で、対立関係にあった四鳴家の新兵器である、白騎士との交戦情報を欲したのか。

 かなり強引な手段で接触し、桃太と交戦したようだ。


(ひょっとしたら、オウモさんが四鳴家に蒸気鎧の情報を盗まれた仕返しに、一葉家に回収してくれって頼んだ可能性すらある、か)


 いずれにせよ、兜の下の素顔が陸喜かもしれない黒騎士に止められては、桃太もこれ以上強くは言えなかった。


「離岸さん。カッとなってすみませんでした。よろしくお願いします」

「ええ、利害の一致する間は仲良くやりましょうや。僕はお役に立ちますぜ」


 いずれまた敵対するかも知れないが、桃太と亜大はひとまず握手を交わした。

 そうこうしている間に毒の浄化作業が終わったらしい。


「サメっ、桃太おにーさん。これでもう安全サメエ」

「ありがとう、紗雨ちゃん」


 桃太がサメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨を抱き寄せて撫でていると、黒騎士がやや不機嫌そうにゴホンと咳払いした。


「それで亜大。レジスタンス代表の朱蘭さんは私たちに何をさせたいんだ。式鬼にジュシュン村で待てとのみ書かれていたのは、万が一にも〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟に盗み見られてはならない、重要な命令があったからだろう?」


 黒騎士の思いもよらぬ発言を聞いて、桃太と、紗雨は目を見張る。


「……え、そうだったの?」

「サメエ。確かに盗み見られる心配もあったんだサメエ」


 驚く二人を横目に、得体の知れないキツネ顔の男は懐から蝋で封印された封筒を差し出す。


「ええ、黒騎士さんの言った通りですよ。『ガッピ砦を守る晴峰道楽はるみねどうらくの部隊がキソの里に攻められているから、捕虜を後方に送り届ける隊と別れた上で、救援に向かえ』というのが、朱蘭の姐さんからのお達しです」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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黒騎士&桃太「「遼来来!」」
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