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第797話 敵か味方か、式鬼使い!?

797


 西暦二〇X二年、一二月一一日の昼。

 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたとサメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨たけはやさあめは、漆黒のフルプレートアーマーで武装した正体不明の黒騎士達の助力もあり、異世界クマ国で百万人を殺傷したテロリスト団体、〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟を辛くも退け、ジュシュン村から追い払った。

 

「よし、戦闘終了。こいつは使い勝手が良さそうじゃないか、無事な毒は回収して、と」

「「あいつ一体、何をやってるんだ(サメ)ーっ」」


 しかしながら、援軍にかけつけたレジスタンスの隊長である〝式鬼使い(デーモンマスター)〟が同じ戦場で戦った自分たちに挨拶ひとつすることもなく、ニタニタと歪んだ笑みをうかべながら地面に転がる毒瓶をこそこそと集め始めたため、揃って疑問の声をあげた。


「貴方は、どういうつもりですか?」

「それには、触っちゃだめ、サメエ」


 さすがに捨ておけず、桃太と紗雨が走り寄ると、キツネ顔の男は露骨に視線を逸らした。


「おやおや、地球日本でもっとも新しい勇者と名高い出雲桃太様と、異世界クマ国代表カムロ様の令嬢、建速紗雨様じゃないですか。出会えて、光栄ですぜ。僕は離岸りがん亜大あだい、レジスタンスに協力させていただいてやんす。お見知り置きを」


 キツネ顔の男は、〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟が持ち込んだ毒の瓶を背後に隠しつつ、白々しく挨拶をした。


「その毒、どうするつもりなんです?」

「サメエ。中にガスが入っていて、とっても危ないんどサメエ」

「も、もちろん、持ち帰って処分するつもりでやんすよ」


 亜大は怪しまれてなお、ポケットに入れたりバックパックに入れたりと、バダバタ胡麻化ごまかそうと足掻いたものの、さすがに無理と諦めたようだ。


「なんなら、お渡しましょうか?」

「ええ、お願いします。紗雨ちゃん、水術で無毒化をお願いできる?」

「むふふーっ。おまかせサメエ。巫女の手際に驚くんだサメエ」

「おおっ、さすがですな」


 桃太は、紗雨が水柱で毒液を浄化するのを見つめつつ、直接亜大と言葉をかわしたことで、やはり背筋の冷える得体の知れなさを感じていた。


「すみません、離岸さん、以前どこかで会ったことはありませんか? たとえば冒険者組合のお膝もとである〝楽陽区らくようく〟の図書館近くとか?」

 

 紗雨が結界を敷いて祝詞のりとを唱え、瓶に入った毒を処分する中――。

 桃太が更に踏み込むと、亜大は図星だったらしく、露骨に目を泳がせる。


「い、いやー僕は田舎のしがない冒険者だから、東京の楽陽区なんて行ったこともないなあ」

 

 亜大がいけしゃあしゃあと嘘をついたことに腹をたて、桃太は胸ぐらを掴まんばかりの距離まで迫った。

 ここまで接近してしまえば、式鬼を使うより、桃太が殴るか組み付く方が絶対に早い。自爆攻撃とばかりに毒を用いられた場合は危険だったが、瓶は回収して紗雨が処置中だ。

 キツネ顔の男も、逃げられないと気づいたのだろう。ヘラヘラした態度から一転して真顔になるや、底知れぬ悪意を滲み出していた。


「あーっ。そういや昔のバイトで家出して、物知らずにも危険な反社組織に入ってしまった女の子を、親族の頼みで保護しようとしたら、物知らずなクソガキにからまれた、みたいなことがあったかも知れないなあ」

栄彦はるひこさん……。俺の知るその子の親族からは、そんなことは聞いてないなあ。だいたい女の子一人保護するのに、式鬼なんて必要かな?」



あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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>だいたい女の子一人保護するのに、式鬼なんて必要かな? 亜大「いやいや、反社の新型兵器を乗ってるの相手にか弱い僕が生身で立ち向かえるわけないでしょう?」
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