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第791話 紗雨の新しい? サメ戦闘術

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「ふぉーヘッディッド、しゃーくドリルあたっく。桃太おにーさんと見た映画にヒントを得た技を受けるサメエ」

「なにそれえっ!?」


 サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼ぎんぱつへきがんの少女、建速紗雨たけはやさあめが、サメの頭に似せた四つの水ドリルによる連続攻撃を放つや、テロリスト団体〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟に雇われた赤髪の傭兵、根来志津梅ねごろしづめは黒一色の着物をひるがえし、這うようにして必死でかわした。

 サメ好き少女の思い入れが反映されたのか、威力もバカみたいに高く、回転する水の刃に触れた木々が音を立てて倒れる。


「時の流れに磨かれた伝統武術の大切さはわかるけど、新しいアイデアだって大切なんだサメ。次は、動画で見たカンフー使いがサメと戦うアクションから考えついたサメビームなんだサメエ!」


 次に紗雨が両手のひらを突き出すや、サメ型の水流が噴出し、回避した志津梅の背後にあった川原の岩石をまとめて押し流す。


「いや、もう新しい古いの問題じゃないですよね。ビームはともかくカンフー要素がまるでないっ。こ、これが紗雨姫。偵察班から聞いていたけれど、確かに戦闘法がハチャメチャで、既存の流派とはまるで違う」


 紗雨の戦闘術は、養父カムロから教えられた護身術が基礎になっているが……。地球のB級映画やら、ネタ動画を参考にアレンジしたため非常に独特で、何をやらかすかわからない支離滅裂しりめつれつなものだ。

 そして、その意味不明さこそ、志津梅を恐怖させていた。


「サーメッメ。驚いたサメエ?

 さっき志津梅さんは、自分の流派を神代から受け継がれた大蛇殺しの戦闘武術と言っていたけれど、紗雨もカムロのジイチャンから、金属製の糸を使って戦う流派を聞いたことがある。

 その切り札には、おでんオネーチャンと同じように、文字を利用して術を使う技があるとも……。貴女の使う武術は、〝古神流こしんりゅう〟サメエ?」


 一方の紗雨は落ち着いており、再び組みつこうと手を伸ばしながら、まっすぐな目で問いかける余裕すらあった。

 志津梅も絆されたのか、真っ向から殴り合いつつも正直に答えた。


「紗雨姫、ご存知でしたか。はい、アタシが納めた流派は、古神流。雷神タケミカヅチ、刀神フツヌシ、氷神アマツミカボシら、古き神々が八岐大蛇とその眷属を退治する際に使ったとされる、一対多数を相手どることにたけた武術です。もっとも、地球と繋がって以降、それまで使っていた古い象形文字を梵字ぼんじに改めるなど、ずいぶん変化しましたし、所詮は箔付はくづけの言い伝えでしょうがね」


 紗雨は、自身と互角に戦う志津梅の韜晦とうかいに対し、首をぶんぶんと横にふった。


「うーん。カムロのジイチャンは、伝説は本当だっていっていたサメエ。でもやり方を教えてって頼んだら、危ないからダメって断られたんだサメエ」

「古神流の修行は、虐待も同然なんです。技は時代ごとに改めても、習得難度の高さは古来より変わらない。カムロ様の判断は正しいです」


 志津梅は会話を続けながらも、わずかな隙を狙って紗雨に鉄線を投げ、あたかも網のように広げて包み込もうとする。


「だから、紗雨は〝古神流〟が使う金属糸と、似たような術を編み出したんだサメエ」

「なっ」


 その回避困難な鉄線の攻撃を、紗雨は水で糸でを編んで迎撃し、相殺した。


「これは旅の間にみずちオネーサンから学んだ術をアレンジした、サメクモイトの術。おっきなサメとクモが戦ったり、合体する映画を見てピンと来て、温めていた自慢のアイデアなんだサメエ」

「なんてことっ、B級映画にもほどがある!」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
サメ映画って、なんだっけ? 中にはサメが出ないサメ映画なるものがあると聞いたので、 もしかして紗雨ちゃんが戦場にいないこと自体が、何らかの策になる日が来るのか?
まぁ、ベースは暗殺人形用の物ですし……そこにビキニアーマー成分も加わってるとなるとなぁ
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