第781話 桃太と黒騎士、ベストタッグ!?
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「黒騎士、あのデカブツを、巨大騎士級人形を倒す。ぬかるなよ」
「トー……出雲こそ、油断するなよ」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太と、漆黒のフルプレートアーマーをまとった黒騎士は、異世界クマ国政府首長カムロと、その反政府団体〝前進同盟〟代表のオウモ――それぞれ敵対する組織の長と深い縁があるにもかかわらず、まるで長年の友人であるかのように、背中合わせで駆け出した。
「〝完全正義帝国〟はヒスイ河の支流を盾にしている。上と下に別れて行こう」
「ああ、壊された蒸気バイクの仇を討たせてもらう。戦闘機能選択、モード〝一目鬼〟、状況開始!」
桃太は靴裏から衝撃波を放って川の上を跳躍し、黒騎士はナイフを握りながら川面をホバー走行で加速する。
「サメメ、速いサメエ。置いていかないで欲しいサメエ」
サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨が必死で追いすがるも、二人を水弾や水壁で援護しながらの移動なので、どうしても遅くなる。
一方の桃太と黒騎士は、紗雨やレジスタンス達、後衛の援護を受けたことで加速。比較的スムーズに、〝巨大騎士級人形〟を守る屍体人形部隊の中へ飛び込んだ。
「飛んで火にいる夏の虫とはこのことよ」
〝完全正義帝国〟の兵士たちがあやつる空飛ぶ〝兵士級人形〟が、手足を槍に変化させて、障害物のない川を移動する二人めがけて間断なく投げつけるも――。
「私を足場に使え」
「助かる。我流・長巻。からのホームラン!」
「どちらかというとピッチャー返しでは? 電磁網を喰らえ!」
桃太が黒騎士の背中に着地しつつ、右腕に衝撃波をまとわせて野球のバットのように打ち返して撹乱し、さらに黒騎士がビリビリと感電する電磁網を肩パーツから射出して、隙を拡大させる。
「なんだ? なんでこいつら、こうも息がぴったりなんだ?」
「敵同士じゃないのかよ?」
「サササメメメエエエ。桃太おにーさんの隣をとっちゃやだサメーっ」
桃太と黒騎士は、テロリスト達が困惑し、紗雨が嫉妬するほどに息のあった連携攻撃で屍体人形を撃破しつつ、山道を駆け抜けてデカ物に接近。
「黒騎士、ラストスパートだ。スリップストリームを生かして進むぞ」
「ああ、ジェッ……前衛は私がやろう。タイミングは任せる」
「GAAAA!?」
戦車キメラはたてがみから雷を放つものの――。
桃太と黒騎士あたかも一体のようにぴったりの呼吸で進み、迎撃のわずかな隙間を逃さずその胸元へと接近する。
「タイミングはバッチリだ。我流・鎧通し!」
「ふ、こうやって共に戦うのも悪くない。戦闘機能選択、モード〝狩猟鬼〟、戦闘続行!」
桃太が飛び出して、獅子の頭を掴んで衝撃波でゆらして傷口を広げ、黒騎士が銃撃を叩き込む。
「衝撃の嵐に沈め!」
「オウモさん直伝の大技を見せてやる。〝鬼術・帝釈天〟!」
トドメとばかりに、桃太は右腕に巻きつけた衝撃刃で、黒騎士は雷光をまとったナイフで、横倒しになったタワーマンションを連想させる巨大人形を、X字に切り裂いた。
「「これが俺、私たちのタッグ技だ」」
「GAAAA……」
黒騎士が桃太の手を引いて離脱した時には、全長三〇メートルの戦車キメラは全身を衝撃波と雷撃で灼き切られ、断末魔の悲鳴をあげながらボロボロと崩れ落ちて、沈黙した。
「さ、サメエエ」
紗雨も一撃を入れようとしたものの、既にオーバーキルもはなはだしい。
「「ぎゃあああ。うそだろ、二人が相手といえ、〝巨大騎士級人形〟が一撃でやられた!?」」
「桃太おにーさんと黒騎士から、そこはかとない圧力を感じるサメ。これじゃあ、押し出されちゃうサメーッ!」
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あとがき
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