第779話 仲間との別れと敵の再来
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「サメメ? 桃太おにーさん、変わった格好の鳥さんサメエ?」
「紗雨ちゃん、この槍みたいなクチバシの鳥とは、どこかで戦ったはずなんだ……」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太は、レジスタンスの本隊から伝書鳩代わりに飛んできた物珍しい式鬼を見て、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨と共に目を奪われていた。
「オーマイガっ。カムロのジジイといい、飲んだくれの朱蘭さんといい。どこもかしこもクライアントは人使いが荒いから困る」
「クマ国は今大変な状況だし、レジスタンスもまだまだ小規模で層が薄いからね」
その間に桃太の相棒である、金髪赤目の少年、五馬乂と、彼の首に巻き付く三毛猫に化けた少女、三縞凛音は、指示書を読み込んで頭をかかえていた。
どうやらレジスタンスの臨時代表ドランケン・フレンジーこと、元勇者パーティ〝J・Y・O〟代表、一葉朱蘭から、またぞろ無理難題をもちかけられたようだ。
「オーライ、相棒! キソの里攻略を手伝いにこいだとさ。ちょっくら行ってくる」
「紗雨ちゃん。乂とワタシはレジスタンスでは朱蘭さんに個人的に協力している……という立場なの。支援要請は無視できないから、先に行くわね」
乂と凛音は実のところ、クマ国代表カムロの命令で動いているのだが、レジスタンスに潜り込んで、そういった仮の立ち位置を確保しているらしい。
二人とも地球日本では死亡認定されているが、元はそれぞれ勇者パーティ〝N・A・G・A〟と〝C・H・O 〟の代表だ。
同じく元八大勇者の一人であった朱蘭とは、過去に個人的な付き合いもあったのだろう。
「キソの里を攻略するのなら、なにかお力になれるかも知れません。乂さんのバイクの後ろに乗せてもらえませんか?」
「わたしは一度、戦闘艦トツカに連絡を取りたいわ。元〝前進同盟〟の幹部でレジスタンスのまとめ役なら、遠隔通信手段くらい保有していそうね。琴に変身すれば、イタル君が持てるくらい小さいから一緒に乗れるでしょう」
また一行の中で参謀を務める黒髪褐色肌の少年、芙蓉イタルと、和琴に化けた付喪神の女性、佐倉みずちもまた、乂や凛音と同行を決めたようだ。
「わかった。みんな、気をつけて。キソの里で会おう」
「紗雨と桃太おにーさんも、すぐに追いつくんだサメエ」
かくして、桃太と紗雨は仲間と別行動を取り、本来は好敵手である黒騎士と共に、ダンキンらテロリスト団体、〝完全正義帝国〟の捕虜を監視しながら、ジュシュン村でレジスタンス部隊の到着を待つことにした。
「……」
「GA?」
桃太は、レジスタンスからもたらされた指示書以上に、それを運んできた式鬼に強い興味を引かれ、無言でたたずんていた。
亡き親友、呉陸喜と同一人物の可能性がある黒騎士の前では、およそ口に出す訳にはいかなかったが、彼の妹である呉陸羽を襲った式鬼に酷似していたからだ。
「気になるのか? その鳥の名前は 〝錐嘴鳥〟。捕縛こそ困難だが、異界迷宮カクリヨの広範囲に棲息しているぞ。たしか、焔学園二年一組が合宿していた〝シャクヤクの島〟にもいたから、そこで見たんじゃないか?」
「うーん、そうかも知れないな」
桃太は尻の座りが悪かったものの、黒騎士の発言に納得して、その夜は眠りについた。しかしながら、翌日の朝早くから平穏は破られる。
「サメエ、桃太おにーさん、起きるサメエ。なんかめちゃおっきい戦車キメラが近づいてくるサメエ!」
あとがき
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