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第778話 新たな盤面

778


「出雲、ここはこらえて欲しい。〝J・Y・Oジュディジャス・ヤング・オーダー〟の〝鬼勇者ヒーロー〟だった一葉朱蘭も、彼女の部下である〝式鬼使い(デーモンマスター)〟、離岸りがん亜大あだいも、なぜかつるんでいる〝執事バトラー〟の晴峰はるみね道楽どうらくも、揃って悪人だが……優秀なんだ。今のレジスタンスは彼らがいないと立ち行かないだろう」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたと、クマ国代表カムロの養女であるサメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨たけはやがレジスタンスに不審を抱いたことをまざまざと感じ取ったか、黒騎士は二人を説得すべく訥々(とつとつ)と語りだした。

 曰く、レジスタンスといっても、〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟の虐殺からクマ国人のコミュニティを守るバラバラの自警団、その集合体に近いのだという。


「レジスタンス全体を広い視野で動かすためにはのんだくれの朱蘭さんが――。

 アマチュアの戦士達を率いて軍事行動を起こすにはエセ執事の道楽さんが――。

 そして、各地の抵抗運動で連携をとるためには結婚詐欺師の亜大さんが必要不可欠なんだ――。

 コウナン地方北部まで、クマ国の救援が来るまでは、どうかこらえてほしい」


 黒騎士が真摯しんしに頭を下げる姿を見て、桃太と紗雨は顔を曇らせる。


「のんだくれに、エセ執事に、結婚詐欺師。揃いも揃って、手を借りたくない相手だけど、緊急事態だからなあ」

「ジイチャン達もすぐにはこれないし、仕方ないサメエ」


 二人とも、本当のところは「地球日本で指名手配された三人なんて信用できない」と抗議したいところだっだ。

 だが黒騎士の発言は筋が通っており、彼の誤魔化しがない鬼気迫る説得を受けては、折れざるを得なかった。


「ま、まあうちにも賈南かなんさんがいるし、敵味方が入れ替わることってよくあるよね」

「サメエエ。林魚はやしうお達だって、一度は桃太おにーさんと殴りあってるサメエ」


 なにせ桃太自身が率いる冒険者パーティ〝W・Aワイルド・アドベンチャラーズ〟もまた、〝鬼の力〟の根源、異界迷宮カクリヨの首魁である八岐大蛇の首を自称する少女、伊吹賈南いぶきかなんを筆頭に、過去に刃を交えた者が何人も仲間に加わっていたからだ。

 カムロが目論む地球、異世界クマ国、異界迷宮カクリヨの三世界をバラバラにする〝三世界分離計画〟阻止のために人心を集め、〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟を鎮めるという新たな盤面を迎えた以上……。

 最終的には刃を交える相手であっても、一時的ならば手を貸し手を借りることを拒む理由はない、そう桃太は覚悟を決めた。


「わかったよ。黒騎士、一時共闘だ。レジスタンスに協力する」

「ありがたい」


 桃太が了承すると、黒騎士は親指を立てて感謝を示す。


「GAA!」


 その時、空から槍の如き長いくちばしが特徴的な一羽の鳥型モンスターが飛んできて、蒸気鎧の背中から生えたオルガンパイプのような排気口に止まった。


「お、きたきた。さっき言っていた連絡手段がこれ。式鬼の〝錐嘴鳥しすいちょう〟だよ。明日の昼にはレジスタンスの一隊が船でジュシュン村へ着くという知らせと、がい君とリンさんへの指示が届いたようだ」


 黒騎士は式鬼の足に結ばれた手紙を受け取り、集まった一同へ見せる。


「あれ、この鳥は……」


 しかし、桃太は手紙よりもむしろ、式鬼に注目していた。

 色を失った街並み、灰色に染まる結界の中で、拳を交えた記憶があったからだ。


「サメメ? 桃太おにーさん、変わった格好の鳥さんサメエ?」

「紗雨ちゃん、この槍みたいなクチバシの鳥とは、どこかで戦ったはずなんだ……」

あとがき

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