第775話 桃太と乂のコンビネーションアーツ
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「桃太さん、乂さん。みずちさんの分析によると、〝有角蹄鬼〟となったダンキンは、ガスマントと砂の翼に加え、二つを重ねた二重鎧で守っているようです。鉄壁の守りを破るためには、間髪入れない二連撃が必要です!」
「「了解」」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太と、金髪赤目の長身少年、五馬乂は、参謀役である芙蓉イタルからアドバイスを受けて、立て直しをはかった。
「ふむ、必要なら狙撃を決めるが?」
「ガイ。桃太おにーさんの本物のパートナーである、紗雨と変わるサメエ?」
二人に縁深い、フルプレートアーマーで武装した黒騎士と、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨は、テロリスト団体〝完全正義帝国〟の兵士達を制圧しながら問いかけたものの……。
「ノープロブレム。ここは、オレと相棒の舞台だぜ。二人には後詰めを任せる」
乂は桃太に向けて親指をたて、自らの肩を示した。
「相棒、初撃は任せな。さあ、幕引きといこうぜ」
「わかった。二太刀目で、ダンキンさんを無力化するのは、任せてくれ」
桃太は、乂の肩に飛び乗り、変則的な二人乗りで、最後の連携を決めるべくダンキンに直進する。
「キョキョキョ。また奇妙な乗り方をする。クソガキどもめ、人を怒らせるのもほどほどしろよ。目にものを見せてやろう。〝砂丘〟の嵐を受けるがいい」
桃太が乂の肩に乗ったのは、蒸気バイクのよう〝鬼の力〟が宿る機械に乗ると壊してしまう特性によるもので、挑発の意図はなかったのだが……。
キレたダンキンは、遠隔操作端末である〝砂丘〟を固めた砲弾を射出しつつ、隠蔽ガスで姿を隠した。
「悪いが、そういった攻撃には慣れている。なぜなら、柳さんとは何度も模擬戦をやっているからね」
「アイキャンドゥイットノースェット( あせもかかねえよ)。柳には、祖平って厄介なパートナーがいるけど、ダンキンにはもう誰もいやしない。とっておきのコンビネーションアーツってやつを見せてやるよ」
「乂、やるぞ!」
桃太は乂の肩から飛び上がりながら、手裏剣を連打してガスの隠蔽をはぎとり、乂はその隙をついてダンキンへ斬りかかった。
「キョキョキョっ、馬鹿めが。クソガキ、背中に刃を隠していてもわかるぞ。お前の次の一撃は右からの袈裟斬りだ!」
「そいつは、残念。五馬家の剣術は二刀流でな。左手でも切れるんだよ! 〝砂丘〟を生み出すお前の力の源、今度こそ断たせてもらうぜ。――変幻抜刀・疾風斬!」
乂の風をともなう斬撃は、ダンキンと一体化した宝石、〝鬼神具・深森悪霊の宝玉〟を片端から打ち砕き……。
「ダンキン。もうこれ以上、罪を重ねるな。アンタの呪いはここで断つっ。〝生太刀・草薙〟!」
同時に、桃太がかかげた右手を振り下ろすや、半径一〇メートルを攪拌し、粉砕する衝撃の嵐が炸裂。
ダンキンに宿る〝鬼の力〟だけを粉砕した。
「キョキョ。まだだ、殺して殺し続ければ、どこまでも強くなれる。鬼神具よ、我に力をっ。よこせえええっ」
ダンキンは、消えゆく〝砂丘〟とその製造元である色とりどりの宝玉達に手を伸ばして、諦め悪く吠えたける。
されど、既に戦いは終わっていた。
「「臨兵闘者皆陣烈在前――九字封印!」」
桃太と乂が九字を切ると、鬼の仮面が真っ二つに割れて、巨漢のマッシブな肉体が消失し、まるでミイラのようにしぼんだ老人が転がり出る。
「わしの〝鬼神具・深森悪霊の宝玉が、〝砂丘〟が、絶対無敵の肉体がああ」
あとがき
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