第771話 地霊将軍ダンキンの執念
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「あああ。わしの〝陸竜人形〟がっ。都市一つ分の死体が必要で、そうそう創れるものではないのだぞ。おのれおのれおのれえええっ」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太と、彼がかぶる仮面に変身した少年、五馬乂が、仲間達の助力を借りて全長四〇メートルの怪物的な兵器、〝陸竜人形〟を葬りさるや……。
罰当たりな兵器を操っていたテロリスト団体〝完全正義帝国〟の地霊将軍ダイキンは、ふとましい体にジャジャラと張り付いた宝石を鳴らしながら慟哭した。
「「ダンキン将軍の〝陸竜人形〟がやられたぞ」」
「「もうダメだ、逃げるぞ。出雲桃太が将軍にかかりきりになっている今が脱出のチャンスだ」」
そんな悲しみに暮れる上司に対し、彼の側近であった部下達は支えるでもなく、見捨てて逃亡を選択する。
「逃がさないサメーッ」
「情報を吐いてもらうから、おとなしくなさい」
「「ぎゃああああっ。こんなところでええ」」
しかしながら、桃太の仲間達が黙って見過ごすはずもない。
サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨は問答無用のアッパーカットで吹っ飛ばし、三毛猫に化けた少女、三縞凛音がクルクルと宙を舞いながら猫キックで蹴り倒す。
「あっちはだめだ。もう一台のバイク使いを狙え。黒鎧野郎のバイクは空を飛ぶ能力が低いし、この足場の悪さなら、陸竜人形のように転倒だって狙えるはずだ」
「狙撃銃は怖いが、連発はできない。全員でかかればなんとかなるだろう」
逃亡兵達は踵を返して、黒騎士が待ち受ける方角から逃れようとするも――。
「なるほど、そいつはもっともだ。バイクからは降りるとしよう。だが。この手の足場の悪さは、私にとって慣れたものでね。戦闘機能選択、モード〝一目鬼〟。戦闘続行!」
黒騎士はバイクから降りて銃を義腕の中にさし戻し、近接格闘仕様に装備を変えるや――。
鎧の背部に仕込んだ蒸気機関を最大稼働させ、オルガンパイプ状の排気口とブーツから熱気を吐き出してホバー走行で走り回りながら、ナイフでバッタバッタと切り倒した。
「「〝鬼神具〟を二つ持ちとか、どうなってるんだこいつは!?」」
かくしてダンキンの部下達は逃れること叶わず、ジュシュン村へと追い立てられて……。
「今です。捕まえましょう」
「「殺された仲間達の恨みを晴らす。裁判所に叩き込んでやる」
イタルの指揮の元、生き残ったレジスタンス達が、仲間達の仇を次々に拘束して復仇を果たした。
「ダンキン、覚悟! 我流・長巻」
「シャーッシャッシャ。往生しなあっ」
仲間たちが優位に戦闘を進める一方、桃太と乂はバイクにのったまま、〝完全正義帝国〟の指揮官、地霊将軍ダンキンと最後の交戦を始めていた。
「くそがああ。〝鬼神具・深森悪霊の宝玉〟の力は、役名〝砂丘支配者〟の真価はこんなものではない」
老いたる指揮官は、最大戦力である〝陸竜人形〟を失ってなお、真っ向から二人を迎え撃つ。
ダンキンは〝砂丘〟の砂をまとめて槍を形成、刃とは逆方向にある石突からはジェット機のようにガスを噴出して飛翔し、桃太が腕に巻いた衝撃の刃と斬り結んでいた。
「ダンキン将軍は、生身で空を飛ぶのかっ。技の冴えも、八大勇者の一人だった七罪業夢さんに勝るとも劣らないぞ」
「イッツ、クレイジー! 〝鬼の力〟があるといえ、蒸気バイクを相手に、ここまで接近戦をやれるとはっ」
あとがき
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