第768話 巨竜の猛威
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「相棒、くるぞ!」
「陸竜人形、ついに動き出したか」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太と、彼の右顔を張り付く仮面となった少年、五馬乂は、テロリスト団体〝完全正義帝国〟の地霊将軍ダンキンが操る、全長四〇メートルの巨大なドラゴンを食い止めるべくバイクを走らせた。
「桃太さん、こちらで迎えうちましょう」
「無理をしないで、わたしたちだって力になれる」
ジュシュン村でレジスタンスメンバーを指揮する、女物の服を着た少年、芙蓉イタルと、水色髪にセーラー帽をかぶった付喪神、佐倉みずちが制止するものの……。
「まずはひと当てして情報をさぐりますっ」
「フリーズ! ドラゴンめ、村に近づくんじゃない!」
桃太と乂は、村の仲間達へ手を振って更に加速する。
「レッツダンスっ。相棒、回避は任せな」
「頼むよ、乂。我流・長巻!」
桃太は乂の運転支援を得て、空飛ぶバイクで〝陸竜人形〟とすれ違ったのち、豪快に一八〇度ターンを決めて、衝撃剣で背後へ斬りかかった。
しかしながら、死体を材料に作られた怪物の隙をついた一撃は、ダンキンの操る〝砂丘〟砂とガス状の複合装甲で覆われ、更なる強度を得た厚い鱗によって弾かれる。
「かたっ、傷一つつけられないとかありかっ?」
「相棒、 まずい。攻撃がくるぞ」
「キョキョキョ。シネえええい!」
「GAAA!」
桃太達が〝鬼神具・深森悪霊の宝玉〟で強化された怪物に衝撃刃が通じず、慌てふためく一方。
ダンキンは、うろちょろする敵が接近してきた今がチャンスと、怪獣めいたドラゴンに命じて長い尻尾を振り回し、バイクごと轢き潰そうとする。
「のわわ。あぶないっ」
「オーマイガっ。相棒、風でバランスをとるから、地面ギリギリを走り抜けろ」
桃太は、仮面となって顔にはりついた乂の助力もあり、横倒し寸前のアグレッシブな走法で川原を疾走、辛くも回避に成功した。
しかしながら、〝陸竜人形〟の破壊力は絶大だ。尻尾が地面をえぐりとり、大きな地割れができている。
「キョキョっ。それで逃げられたとでも?」
桃太達の乗ったバイクを追って、ダンキンが操る陸竜人形は息を吸い……。
ドラゴンを守る砂の装甲が熱されて、ガスエネルギーがぼうぼうと燃え盛る。
「相棒、追撃がくるぞっ。ターンするから振り落とされるなよ!」
「ひえええっ。どんな角度だよっ」
乂が再び一八〇度の鋭角ターンを決めた、まさにその瞬間。
陸竜人形はビルほどの巨体を震わせながら炎のブレスを吐き出し、周辺一帯の一帯を薙ぎ払い、堤防を崩壊させるばかりか、川面の一分を蒸発させた。
回避行動があと一瞬でも遅れれば、二人の命はなかっただろう。
「す、すさまじい、パワーだ」
「ワットザヘル(なんてこったい)。ダンキンの使っている〝砂丘〟って、柳心紺が使っていた遠隔操作端末と似たようなものだろ。隠蔽のガスに、砂の防壁、最後にゃカンフル剤兼、ブレス用のエネルギー電池ってか。応用範囲が広いにもほどがある!」
あとがき
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