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第766話 青春模様、あるいは女心と男のロマン

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「ううう、これが賈南かなんちゃんが言っていた〝NTR( ネトラレ)〟なんだサメエ。〝WSS( わたしがさきにすきだったのに〟なんだサメエ……」


 サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼ぎんぱつへきがんの少女、建速紗雨たけはやさあめは、地面にがっくりと膝をついた。

 彼女が思いを寄せる、額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたが、幼馴染である五馬乂いつまがいと合体変身を果たしたことに、強い衝撃を受けたからだ。


「紗雨ちゃん、不穏なことは言わないの。ワタシも降ろされたし、きっと二人でバイクに乗りたかったのよ。乂の煽りなんて気にしちゃダメ。……あとでシメておくから」


 三毛猫に化けた少女、三縞凛音みしまりんねが紗雨の元へ駆け寄り、ポンポンと肩を叩いてなぐさめる。


「ふ。さすがはトー、……出雲桃太。マシンにかける情熱、それでこそ、だ。次はあの短気男ではなく、私と一緒のバイクでタンデムすれば、問題はすべて解決だな。オウモさんなら、彼と〝鬼の力〟が宿る機械との相性だって解決できることだろう。ヨシ!」


 しかしながら、全身を漆黒のフルプレートアーマーで覆う正体不明の黒騎士が二人の近くまでバイクを寄せつつ、桃太達の様子を見て満足げに親指を立てたからおさまらない。


「さ、サメエエっ。なーにがヨシなの、全然良くないんだサメエ」

「く、黒騎士さん。乂が短気なのは一切否定できないけれど、貴方も女心を理解しないタチかしら」


 紗雨と凛音が抗議するものの、黒騎士は取り合わない。


「紗雨ちゃん、そしてリンさん。男はいくつになっても、ロマンを忘れられないものなのさ」


 黒騎士は愛用のバイクを紗雨と凛音の近くで止めるや、機械仕掛けの両腕で、体を覆うメカニカルな黒の全身鎧を撫でながら断言した。

 午後の日差しによるものか、それとも、鬼神具の意志か? 両腕と鎧の輝きが一瞬、増した気がした。


『うっひょーっ。桃太君と一緒にバイクバトル、夢にまで見た瞬間でござる!』


 桃太が、錆びて赤ちゃけた短剣の中に宿る意識、隠遁竜いんとんりゅうファフニールと関係良好なのと同様に……、黒騎士と彼の鬼神具もまた強い絆で結ばれているのだろう。

 しかしながら、黒騎士のカッコつけた発言が、それぞれパートナーに置いてきぼりにされた少女二人の心を掻き乱したのは言うまでもない。


「……リンちゃん、なんとなくわかったサメエ。この黒騎士さんは、不倶戴天ふぐたいてんの敵なんだサメエ」

「そうね、紗雨ちゃん。この人は、同性だからこそ厄介な相手よ。きっと将来、飲み会やキャンプの誘いで、デートや家族旅行を邪魔してくる厄介者へ進化するに決まっているわ」


 紗雨は青い目で黒騎士をにらみつつ、サメの着ぐるみの尻尾をびたんびたんと叩きつけ……。

 三毛猫に化けた凛音も全身の毛をさかだてながら、シャーと威嚇いかくする。


「そ、そこまで敵視される謂れはないぞ。クマ国と〝前進同盟ぜんしんどうめい〟は敵対関係といえ、今は悪逆非道の〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟を相手に共闘しているじゃないか。ダンキン将軍を倒すのだろう。いい作戦があるんだがのらないか?」


 黒騎士はバイクをおりて、一人と一匹に手を差し伸べたものの……。


「つーんだサメエ」

「ふーんだ。しーらない」


 紗雨と凛音の機嫌はなおらなかった。

 なお、その間も桃太達は森と川をサーキットコースに見たて、ご機嫌でバイクをぶん回していたのは言うまでもない。


「いやっふー。空飛ぶバイク最高!」

「おらおら悪党どもが、道をゆずれ。相棒、このまま〝鬼神具・深森悪霊レーシーの宝玉〟をぶっ壊し、ダンキンの野郎をはっ倒すぞ!」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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>この人は、同性だからこそ厄介な相手よ。きっと将来、飲み会やキャンプの誘いで、デートや家族旅行を邪魔してくる厄介者へ進化するに決まっているわ 邪竜「泥棒猫達が騒いでいるね。この作者のシリーズの真のヒロ…
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