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第764話 もう一台の飛行バイクと、その乗り手

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「えーい、空飛ぶバイクがもう一台あるだと!? あの腕部分は銃? 奴もサイボーグか。〝兵士級人形ソルダート〟よ、破壊しろ」


 異世界クマ国で一〇〇万人を殺傷した極悪テロリスト団体、〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟の幹部である地霊ダンキンは、自分たちが裏切った〝前進同盟ぜんしんどうめい〟からの刺客である黒騎士の猛攻に慌てて迎撃を命じるものの、既に遅い。


「戦闘機能選択、モード〝一眼鬼キュクロプス〟。状況開始!」


 今はレジスタンスの一員となった黒騎士は、右目を覆う眼帯のマークを弓から槌に切り替えると同時に、自らの装備を射撃戦仕様から白兵戦仕様に変更。〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟が操る天使に似せた空飛ぶ屍体人形の中心へと一直線に疾走する。


「そうだった。黒騎士は義腕と蒸気鎧、二種類の〝鬼神具〟を使いこなせるんだった」

「以前、桃太おにーさんと一緒にあの人と戦った時、えらいめに遭ったんだサメエ」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたと、サメの着ぐるみを被った銀髪碧眼ぎんぱつへきがんの少女、建速紗雨たけはやさあめらが、敵と交戦しつつ見守る中……。

 黒騎士は〝兵士級人形ソルダート〟が放つ火球をすり抜け、腕を長剣や槍に変化させて斬りつけてくる個体を、大ぶりのナイフでバッタバッタと斬り捨てる。


「「こいつ、鈍重そうな鎧姿なのに速いぞ!」」


 後衛のサイボーグ兵士達が義腕や義足から放つ銃弾はかすりもせず、前衛の〝兵士級人形ソルダート〟もまた黒騎士のスピードについていけずに翻弄されていた。


「悪いが、ノロマな人形にのんびり付き合っている時間はない!」


 黒騎士は敵陣の中にもかかわらず、あたかも無人の野を行くかのようバイクのアクセルをふかし、オルガンパイプめいた排気口から白煙をたなびかせながら、加速する。

 その速度は時速百キロをゆうに超えており、あっという間に敵集団を引き離した。


「「くっ、奴をとめろ」」

「「まっ、待ちやがれ!」」


 そこで、屍体人形に追いすがらせたのが、ダンキンと彼の部下達の失策だった。


一網打尽いちもうだじんとは、このことだ。電撃網を射出する!」

「「GA!? GAAA!?」」


 黒騎士は、残存する空飛ぶ偽天使人形のうち、一〇体が列をなしたところを、肩部アーマーから投網を発射、高火力な雷を発生させてまとめて片付けた。


「ま、まだだ。まだ〝騎士級人形ルイツァリ〟が残っている。砲撃人形の意地を見せろ。あいつを排除するんだ!」

「GAAA!!」


 ダンキンは戦車キメラに命じて砲撃するものの、黒騎士はジュシュン村周辺の木立ちを盾に滑空して回避する。


「「戦闘機能選択、モード〝狩猟鬼バルバトス〟。戦闘続行!」


 そして、再び射撃戦仕様へと姿を変えて、右の義手に収納していた一〇〇センチを越える長銃を抜き出した。


「その忌々しいキメラ、この一撃で落とす!」

「「ばかめ。貴様が今いる場所を見てみろ、周囲は森だ。移動しながら、そんな障害物だらけの場所から撃って、あたるものか」」


 黒騎士の宣言に対し、〝完全正義帝国〟のサイボーグ兵たちはせせら笑うものの……。


「私の銃弾は、跳弾を利用することで曲げられる!」

「「なに!?」」


 黒騎士が森の影すら消すほどのマズルフラッシュを焚いて撃ち出した弾丸は、木々の間を縁日のスーパーボールのようにバウンドしながら、曲線を描いて森の木々を潜り抜け……。


「GAAA!?」


 最後に残った戦車キメラ〝騎士級人形ルイツァリ〟の頭を撃ち抜き、撃破した。


「なんて技量だ。こんな戦い方もあるのか」

「「う、うそだろおおおっ」」


 桃太が目を見張り、テロリスト達が恐怖に絶叫する中、黒騎士は機械仕掛けの手で親指をあげた。


「トー……。いや、出雲桃太。私は〝前進同盟〟の一員だが、今、この時は共に戦おう」

あとがき

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>私の銃弾は、跳弾を利用することで曲げられる! 演出で『NO FUTURE』って流さないと(サガフロ脳)
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