第761話 支え合う四人と……
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「……乂ってば、秘密兵器を披露して返り討ちになるのは、さすがに格好わるいわよ?」
「いいんだよ、いい男は自分だけ目立つんじゃない。大切なパートナーと共に映えるものさ」
首にマフラーの如く巻きつく三毛猫に化けた幼馴染の少女、三縞凛音の指摘に対し、上半身裸の上に革ジャンパーを羽織った金髪赤目の少年、五馬乂は、空飛ぶバイクで川面の上を走りつつ、爽やかに宣言した。
「あら、いいこと言うじゃない。乂、ひょっとしてカムロさんの梅干しでも食べた?」
これには、凛音も頬を赤く染めたが……、照れ隠しにまぜっ返した。
「なんでだーっ。あんな性格変わるほどの劇物、相棒でなきゃ口にしないよ」
「おいおい、なんて言い草だ。師匠の梅干しはうまいだろ」
なぜか話題が飛び火した、額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太は離れた場所で屍体人形と交戦しつつ、抗議するも……。
「それは桃太おにーさんの味覚が、ジイチャンと近いからサメエ。あの梅干しは一般的には賛否両論なんだサメエ」
「そんなばかな」
他ならぬカムロの養女である、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨が遠くから声をあげたことで、肩を落とした。
「あと相棒っ。お前の料理は、ジジイの梅干しどころか、輪をかけて過激だからな!」
「乂、俺がいつまでもひとつ所にとどまると思うなよ。あれから、さらに上達したのさ。晩飯にでも披露しようか?」
「ほんとかっ、本当に味が改善したのかあっ。むしろ破壊力を増したんじゃないか!」
こうして桃太達四人はしばらくの間、漫才じみた会話に興じながら、テロリスト団体〝完全正義帝国〟との交戦を続けたが……。
「学んだぞっ、覚えたぞっ。
地球日本の勇者、出雲桃太。貴様は遠近両方の戦闘に長けるが、一点突破の爆発力に頼るがゆえに、間合いをずらして衝突の角度を変えれば〝砂丘〟で対応できる。
クマ国代表の娘、建速紗雨。小娘は水場でこそ無双の強さを見せるが、陸で戦えば火力が大幅に下がる。
チンドン屋の五馬乂と、猫のリン。バイクに乗ったデコボココンビは、近接戦闘に特化しすぎだ。集団戦でどうとでもなる。
そして、ジュシュン村でレジスタンスを率いる小童、芙蓉イタルと、よくわからん女、佐倉みずち。お前達二人が一番なにやらかすかわからんが、負傷兵一〇人あまりを抱えている以上、戦局は変えられまい!」
恰幅の良い肉体を宝石で飾った敵指揮官、地霊将軍ダンキンがそれぞれの戦闘法を学習したゆえに、攻めあぐねてしまう。
「だれがチンドン屋だ。サメ子の着ぐるみの方がそれっぽいだろ!」
「乂、紗雨ちゃんは可愛いからいいんだよ」
「あ、相棒。オレは? 格好いいよな?」
「……バイクは、格好いいよ!」
「相棒おおおお」
ついでに桃太が乂に対し、いじられた意趣返しと言わんばかりの反応を返したことで、連携までが不安定になってしまった。
「惑わされないでください。喧嘩している場合じゃありません」
「焦らないで、少しずつ前線を上げていきましょう」
これには、ジュシュン村で援護するイタルとみずちが苦言を呈し……。
「すみませんでした」
「サメエ。サメ映画でもタメの時間は必要なんだサメエ」
桃太と紗雨は反省するも、短気な乂はすでに痺れを切らしたらしい。
「タイムイズマネー(ときはかねなり)! チンタラ待っていられるかっ」
乂はバイクを走らせ、屍体人形を右手に握る短剣で切り裂き、左手で力任せに殴り飛ばしながら、周辺一帯へ響けとばかりに大声をあげた。
「おい黒鎧野郎。いいかげん顔をだせよ。それともナマクラ鉄砲を当てられないのか?」
あとがき
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