第760話 乂を守る幸運の女神
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「キョキョキョ。クソガキめ、散々迷惑をかけられたが、良い情報収集となった。これでお終いだ。最後は不運と踊って死ぬがいい」
テロリスト団体、〝完全正義帝国〟の長老、地霊将軍ダンキンは、蛇のごとき糸に繋がれた屍体人形を操作して、空飛ぶバイクにのった金髪赤目の少年、五馬乂を捕らえることに成功する。
勝利を確信したのか、色とりどりの宝石で飾り立てられた恰幅のいい肉体を揺らして笑う。
「くそ、間に合わないか。乂、バイクから降りるんだ」
「調子に乗って、はしゃぐからそうなるんだサメーっ。仕切りなおすサメエ」
「「いかせるかああ」」
「「GAA! GAAA!!」」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太と、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨は、戦友の救援に向かおうとするも、〝完全正義帝国〟の妨害を受けて間に合わない。
「ノープロブレム(もんだいないさ)! 相棒、サメ子、知っているだろ。オレには幸運の女神が付いている」
そんな二人に対し、乂は余裕そうに白い歯を光らせた。
「なんだとっ」
「ニャー!」
ダンキンが真意を問い返す間もなく、乂の首にマフラーのように巻き付いた三毛猫こと三縞凛音が、義眼の猫目から格子状の熱線を放つ。
「ワタシが契約した〝鬼神具〟はエジプト神話の天空神……〝ホルスの目〟。右の瞳は太陽となりて、敵対者を焼き滅ぼす!」
「はっ、獣風情が無駄な抵抗をっ。なにっ!?」
ダンキンはすぐさま〝砂丘〟で防御を固めるも、その隙間を縫うようにして動く熱線が、バイクに取りついた四体の屍体人形をまとめてバラバラに焼き切った。
「離れていたら、透明化ガスで外れたり、砂の壁で無力化されたりするけれど、こうも近づいてくれれば、容易く破壊できるわ」
「「GAAA!?」」
地に堕ちた屍体人形は、呻きながらも無事なパーツを組み合わせて、ニコイチ、ヨンコイチで再生をはかるも……。
「貴方達が再生する未来は訪れない!」
即座に凛音が追撃して、人形に火をつける。
「ふん、よくぞ我が攻撃をしのいだ。だがそこまでだ。そこはすでに死地。〝騎士級人形〟の砲撃と、〝兵士級人形〟の圧殺で沈むがいい」
「左の瞳は月となりて、万象を見通す。限定された戦場ならば、未来すらも読み切ってみせるっ!」
ダンキンの挑発に対し、凛音が言い放つや否や……。
焼け落ちる〝兵士級人形〟から、爆発の余波で飛び出した槍めいたパーツが、〝騎士級人形〟が放った砲弾に直撃、誤作動を引き起こして起爆。
周囲の砲弾と、追いかけるように間合いを詰めてきた〝兵士級人形〟を巻き込み、あたかもドミノ倒しのように次々と誘爆した。
「まさか、まさか。こんなことがあああっ!?」
「これが〝鬼神具・ホルスの目〟、そして、ワタシの愛が生み出す力よ!」
きっちり決めた凛音はふんすと胸を張ったものの、ジト目で乂をみやる。
「……乂ってば、秘密兵器を披露して返り討ちになるのは、さすがに格好わるいわよ?」
「いいんだよ、いい男は自分だけ目立つんじゃない。大切なパートナーと共に映えるものさ」
あとがき
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