第759話 まさかのピンチ!?
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「アイルドーイット(オレもやるぜ)っ。相棒やサメ子達には負けていられない。リン、火薬壺を寄越してくれ!」
「ごめんなさい、乂。手製爆弾は、さっき使ったのが最後なの」
金髪赤目の少年、五馬乂はテロリスト団体、〝完全正義帝国〟を討とうと意気込み、空飛ぶバイクのアクセルを力一杯踏んだものの、まさかの事態に出鼻をくじかれた。
「……レアリー!? リン、オレの役名〝二刀剣客〟に、隠れた敵を把握したり、討ち取れるような術って、あったっけ?」
「えーと、気合いと根性?」
乂は両手をあげて天を仰ぐが、彼の首に巻き付く三毛猫に化けた少女、三縞凛音も尻尾を丸めて匙をなげた。
乂は一本気なあまり絡め手への対応が不得手であり、凛音はその苦手分野を補うために入念な準備をしていたのだが、さすがに長期戦となれば無理もでてくる。
「ノオオオオ! なんてこったい。術戦闘は苦手なんだぜ」
乂は右手で握った短剣が「だからお前はダメなんだ」とばかりに点滅して抗議するのを無視。
〝鬼の力〟を引き出し、風の刃を放って、〝砂丘〟の透明化ガスを吹き飛ばした。
「スクリューイット(ヤケクソだ)! こうなったら、ガスを吹っ飛ばし、砂壁もくぐって総大将まで一直線に進んでやるぜ」
「キョキョ。脳筋がぁ、二度も三度も同じやり方が通じると思うたか。砂の壁は空中にだって作れるのだ。戦闘機能選択、モード〝餓鬼砂壁〟」
「ちょ、このコースは反則だろ」
が、ダンキンも一度乂にしてやられた反省からか、攻撃無効化の砂壁を何十枚と配置することで、その進撃を阻んだ。
「そして、〝砂丘〟が作り出す砂壁は地上だけに限らん、空に配置すれば質量兵器としても使える。精度が甘いのが難点だがなっ」
更には空に作られた二メートル近い砂壁が、雨のように降り注ぐ。
「ノーウェイ(やばっ)! アレって、攻撃手段としても使えるのかよ。レースゲームの障害物じゃあるまいし、ひょっとして大ピンチ?」
「乂、落ち着いて。これじゃあ援軍にきたのか、足をひっぱりに来たのかわからないじゃない」
そうして、乂と凛音が乗るバイクは足止めを受けたところに……。
「「ダンキン将軍を援護しろおお」」
「「クソガキめ、ぶっ殺してやる」」
「「GAAAA」」
サイボーグ兵が銃撃を放ち、屍体人形が手足を槍に変えて投げつけた。
「ぬおおおっ、めんどうくさい。オレは銃器もエロい人形も好きだが、お前達じゃ興奮しないんだああ」
「ワタシの前でそんなこと言わないでええ」
あまりに張り詰めた戦闘ゆえに、乂の気がゆるんだのも無理はないだろう。
「乂、草が揺れているわ。注意してっ」
「シットっ、遠距離攻撃だけじゃなかったっ? 間合いに踏み込まれたか!」
凛音が注意を促すも既に遅く、バイクを押しつぶすように前後左右から、見えない霧に守られた空飛ぶ屍体人形が現れて、取り囲んだ。
「キョキョキョ、戦闘機能選択、モード〝変色竜霧〟。ようやく捕まえたぞ、クソガキ。兵士級人形よ、そのままバイクごと引き潰せ」
「オーマイバッド(やらかした)!」
乂は天使に似せた人形を振り払おうと必死に抵抗するが……。
「キョキョ。残念だったなあ、年貢の納め時としるがいい」
「「GAA! GAAAA!!」」
ダンキンの使う砂状の兵器端末〝砂丘〟が隠蔽のガスから砂壁に変化して攻撃を阻まれ、とうとうバイクごと持ち上げられてしまう。
「キョキョキョ。クソガキめ、散々迷惑をかけられたが、良い情報収集となった。これでお終いだ。最後は不運と踊って死ぬがいい」
あとがき
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