第753話 鬼神具、深森悪霊の宝玉。その脅威!
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「サメーっ、心紺ちゃんの使う〝砂丘〟に似ているけど、ダンキンのはインチキサメエ。」
「〝砂丘騎士〟も汎用性の高い役名だったけど、〝砂丘支配者〟はより支援能力に特化したタイプか。厄介なっ!」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太と、サメの着ぐるみをかぶる銀髪碧眼の少女、建速紗雨は、テロリスト団体、〝完全正義帝国〟の大部隊を率いる地霊将軍ダンキンの戦闘手腕に圧倒されてしまう。
「柳さんの〝砂丘〟には何度も助けられたけど、いざ相手にするとたまったものじゃないな」
「八岐大蛇・第六の首が〝砂丘〟を改造したって話がどこまで本当かわからないけど、有効範囲が桁違いなんだサメェ」
二人のクラスメイトであり、頼れるパーティメンバーである柳心紺が使う青い砂状兵器と同様に……。
ダンキンが使う黄色い砂状兵器もまた、姿を隠すガス型の形態、〝変色竜霧〟と、対術・対物理防御に特化した砂の形態〝餓鬼砂壁〟という、異なる二種の能力を持っているようだ。
そして〝砂丘騎士〟が個人戦やチーム戦を得意とするのに対して、〝砂丘支配者〟は何百人もの支援が可能らしい。
「桃太さん、紗雨さん。ダンキンが操る〝砂丘〟の能力は、支援と防御に特化しているため、攻撃は部下の銃撃や屍体人形の突撃に頼りきりのようです」
「耳をすませば攻撃だって見抜けるわ。頑張って!」
幼いながらも優れた参謀である芙蓉イタルと、歴戦の付喪神である佐倉みずちが、脱出用のイカダを作りつつ、桃太達に助言する。
だが、解毒したといえ、病み上がりのレジスタンスメンバーを守りつつ、イカダを作るのは無理があったようだ。
「危ないっ、こっちへ来て!」
「ああ、イカダが壊された」
みずちがとっさに展開した水のバリアで攻撃こそ防いだものの、屍体人形の攻撃を受けて、せっかく作った脱出用の船が投げ槍でバラバラにされてしまう。
「これ以上はやらせない」
「そっちにはいかせない」
桃太と紗雨は急いで敵に挑みかかるものの、その足取りは危うい。
「くっ、砂とガスが邪魔で鼻と耳がきかない。これは、戦い辛い」
「桃太おにーさん、二人で〝行者〟に合体変身するサメ?」
桃太は紗雨の提案になやんだものの、首を横にふった。
「でも、前衛一人はさすがに数が足りないよ」
「サメーっ。そうだったサメエっ」
ジュシュン村は、〝完全正義帝国〟に包囲されており、桃太と紗雨が二人で戦っているから持ち堪えている。
もしも一人になったなら、空いた穴から屍体人形が雪崩れ込んでしまうだろう。
「紗雨ちゃん、レジスタンスメンバーはわたしが守るから大丈夫よ。水の壁よ」
「ぼく達も手伝います。村の脱出が困難な以上、放置されたコンテナを使ってバリケードをつくりましょう。皆さんも協力してください」
「「おう、頑張るぞ」」
後方ではめげずにみずちが鬼術で守り、イタルが民間人を指揮して持久戦の構えをとっているものの。
「騎士級人形、砲撃の手を緩めるな」
「ぶっ殺せ!」
〝完全正義帝国〟の攻撃もさらに過激になり、張り詰めたロープのごとき均衡は、いつ破られるかわからない。
「……なんとか、しないとっ」
「サメーっ、負けないんだサメエ」
あとがき
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