第749話 完全正義帝国の弾圧と、レジスタンスの抵抗運動
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「まとめ役の名前はドランケン・フレンジーさん? 直訳すると、酒乱って意味じゃなかったっけ」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太は、コウナン地方を占拠したテロリスト団体、〝完全正義帝国〟に対するレジスタンス活動が、とんでもない名前の女性に指揮されていると知って愕然とした。
「一緒に探索した地下迷宮〝U・S・J〟で、酒瓶を手放さなかったリウちゃんのおじさん、呉栄彦さんを思い出すサメエ。不安になってきたサメエ……」
サメの着ぐるみをかぶった銀髪の少女、建速紗雨も青い瞳を困惑に曇らせている。
「まあまあ、こういうコードネームは、敢えて尖ったものをつける場合があると聞くし、栄彦さんはちゃんと強いからね。切り札が酔拳なのは、どうしても生徒達の教育に悪いだけで……」
セーラー帽をかぶった水色髪の付喪神、佐倉みずちが二千年を生きる年長者らしく、フォローに回るものの……。
「酔拳? ひょっとしてドランケン女史も酔っ払って戦うんですか?」
年若い黒髪褐色肌の少年、芙蓉イタルがストレートに尋ねてしまい……。
「ええ、いつも酔っ払って戦われますが、ドランケンさんはとてもお強い方ですよ」
まさかのレジスタンスメンバーに、肯定されてしまった。
「「ええーっ」」
四人にとっては驚愕の事態だが、意外や意外、結構慕われているようだ。
「誤解されやすいですが、戦士としては凄まじい方です」
「でっかい金棒をぶん回して、空飛ぶ人形を何体も粉砕したんですよ」
「ただ勝ちすぎたせいか、テロリストどもは自分たちの勢力圏にある里まで焼き始めたんです」
「そうか、〝完全正義帝国〟は、追い詰められて焦土作戦をはじめたのか」
桃太の問いに鍛冶屋は頷いた。
「……はい、完全正義帝国の焼き討ちは徹底的で、自分たちの同志にすら犠牲を強いるほどに、苛烈なものでした」
桃太達は、ジュシュン村の外で倒れていた兵士達が、完全正義帝国の仲間達にすら見捨てられていたのだと知り、ほんの少しだけ哀れんだ。
「食料の不足が明らかになり、我々もまたまだ無事な里を探し求めました」
「行き倒れた帝国兵たちの足跡をたどり、このジュシュン備蓄要塞へやってきたところ、食料入りのコンテナを見つけて……」
「勇足でした。毒が入っていたんです」
「地球産の食料でしたから、味が違っていても、こういうものなのだろうと誤解してしまったんです」
鍛冶屋達、レジスタンスは項垂れるものの、空腹では正常な判断が下せなくとも仕方あるまい。
「完全正義帝国め、これが人間のやることか」
「……許せない」
桃太と紗雨は怒りで頬を赤く染めるものの、イタルとみずちの顔色はあっという間に青ざめてゆく。
「みずちさん、この村は危険です。すぐに発ちましょう」
「イタル君、もう遅いわ。わたしや桃太君の索敵から逃れるなんて、たいしたものね」
時既に遅く、空飛ぶ屍体人形ばかりか、戦車キメラ、さらにはドラゴン人形を擁する武装勢力がジュシュン村を包囲していた。
「キョキョ、バレちゃあしょうがない。わしは〝完全正義帝国〟の特務将軍ダンキン。我が〝鬼神具、深森悪霊の宝玉〟は隠密行動に特化している。勘づけただけでも褒めてやろうではないか」
あとがき
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