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第747話 ジュシュン村の不可解な様相

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「桃太さん、遠視鏡で見てください。あそこにジュシュンという、まだ焼かれていない村があるようです。〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟の兵士達は、あそこへ辿り着こうとして叶わなかったのでしょうか?」

「本当だ。最近の里はどこも焼かれていたのに、あの里だけは無事なのは、〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟の拠点だからなのか?」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたは、女物の服を着た黒髪褐色肌の少年、芙蓉ふようイタルから遠視鏡を借りて、ジュシュン村を確認した。

 人の有無は不明だが……、少なくとも焼かれてはいないようだ。


「ここの死体、まだ新しい傷があるから、内輪揉めで死んだのかも知れないサメーっ」


 一方、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨たけはやさあめは、行き倒れた敵兵士の死体を調査して、死因を推察していた。


「あるいは、レジスタンスのような、我々とは別のグループと戦ったのかも知れないわね。どちらにしてもあの村は怪しいわ。桃太君はなにかわかるかしら?」


 水色髪の上にセーラー帽をかぶった付喪神、佐倉みずちに問われた桃太は、耳をそばだて鼻を鳴らし、……肩を落とす。


「すみません。さっきから、死臭のせいか鼻が効かないし、風も濁っていて周囲の気配が掴めないんです」

「ここにあるのは、加工された屍体人形じゃなくて本物の死体だものね。気分が悪くなっても、仕方がないわ。なんだか罠の気配がして落ち着かないけど、弔ってから進みましょう」


 桃太達は敵の死体といえ、〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟に再利用されるのはしのびなく、周辺に放置された屍体人形ともども、土に埋めて埋葬した。

 そうして、四人はダブルカヌーでヒスイ河の支流を遡ってジュシュン村に入ったのだが、一行はそこで驚くべき光景を目にする。


「「な、なんと!?」」


 〝まだ〟……生きている人がいたのだ。


「「うう、たすけて」」


 クマ国の民間人らしき人々が口から血を流し、里のそこかしこで呻きをあげて倒れていた。


「こ、これはいったい? さっきの完全正義帝国兵と戦いになったのか?」

「すぐ治療するわ。解毒はお手のものなのよ。イタル君も水汲みを手伝って。桃太君と紗雨ちゃんは警戒と調査をお願い」

「「はい!」」


 みずちとイタルが治療にあたる中、桃太と紗雨は襲撃に備え、村の異常を調べるべく歩き回った。


完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟が逃げる時に放置したのか? 物資コンテナが山積みだ。彼らは食料を求めてやってきたのかな」


 桃太がいぶかしんで距離をとる中、紗雨は興味津々でコンテナに近づき、中を覗き込む。


「地球から輸入したサメエ? クマ国じゃ作れないインスタント食品やレトルト食品がいっぱい置かれているサメエ」


 彼女が手を伸ばそうとしたところ、ダブルカヌーに張った天幕で、みずちと共に吐血した患者を診ていたイタルが慌てて駆け出し、止めた。


「紗雨さん、触れてはいけません。桃太さんもです。生きている方は喉と胃をやられ、既に亡くなられた方には、不自然に赤い斑点がある。その食料には毒が入っています」


 イタルがそう言って制止すると、紗雨は激情のあまり、服の尻尾を逆立てた。


「自分たちの食料に毒を巻くなんて、〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟はとち狂ったサメエ!?」


 紗雨が大声をあげたことで異常事態に気づき、桃太は彼女の隣へ走り寄り、毒に汚染された食料をおそるおそる確認する。


「まさか、自殺をはかったのか。それとも……」


 桃太は、テロリスト達がそこまで視野狭窄に陥っていたのかと思案して生唾を飲むも、どうにも腑に落ちない。そこへ、ダブルカヌーからみずちの声が響いた。


「紗雨ちゃん、桃太君。患者が目を覚ましたようよ。詳しい事情を聞きだすから船へ来てくれる?」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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