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第745話 変貌した戦場

745


「じゃあ、北に向かって出発しましょう。わたしは水を操れるから、川を遡るのも下るのもスイスイと行けるわよ」

「「みずちさん、よろしくお願いします」」


 西暦二〇X二年一二月一〇日早朝。

 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたら四人は、ダブルカヌーに乗って北上、 〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟の支配圏の奥まで踏み込んでいた。


「これは、なんてひどい」


 桃太達が踏み入る里は、そのことごとくが焼かれて、黒々とした炭になった住居跡だけが残されていた。

 目につく死体はないが、八岐大蛇・第六の首ドラゴンリベレーターがもたらした禁術で、屍体人形に加工されてしまったのだろう。


「くそ、出雲桃太か。ロクツジの野郎に、里を焼いてこいとキソの里から追い出された挙句、こんな大物とかちあうなんてっ」

「ダンキン将軍と合流できればお前達なんか屁でもないのにっ」

「我々は二本足の獣になんて、負けていない。必ずや全員奴隷にしてやるぞ」


 時には、テロリスト達が火をつけている真っ最中に鉢合わせし、交戦することもあった。


「ロクツジ? 詠さんは関係ないだろうけど、姓を捨てさせられる〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟にしちゃ変わった名前だな。我流・直刀」

「こんなのと一緒にしたら、詠ちゃんが可哀想サメ!」

「「ほげえええ」」


 桃太は衝撃波を伴う蹴りを放ち、里を焼こうとした悪人を油缶ごと吹っ飛ばし――、肥料作成のために糞を集めた肥溜めの中へとホールインワン。

 サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨たけはやさあめは、松明を持った悪党に組み打ちを極めて――、川の中へ放り込んで火種を消す。


「身勝手なことを言うにもほどがある。みずちさん、あの救いようがない連中は、勢い任せでまっすぐ突っ込んで来るので落とし穴をつくってください」

「おやすいご用よ。いつの時代にもああいう過激派は、妄念以外に何も見えていないから、簡単に転んでしまう」

「「あんばざああ」」


 また、女物の服を着た黒髪褐色肌の少年、芙蓉ふようイタルと、セーラー帽をかぶった水色髪の付喪神つくもがみ、佐倉みずちが罠をはり――、鬼術で地下水を操ってくり抜いた穴へ落として無力化した。


「「リノーが勝てなかった奴らに、勝てねえよおおおっ」」


 放火魔達は格の違いを悟ったのだろう、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。


「「に、にげろ。ダンキン将軍の元まで逃げるんだ」」


 かくして、桃太一行は散発的に襲ってくるテロリスト達を蹴散らしながら、ただただ前へ進み――。

 これまで入れなかった〝完全正義帝国〟の本拠地、コウナン地方北部の深奥へと踏み込んだ。


「なんだなんだ、ものすごいことになっているぞ」

「サメーっ。えらいこっちゃサメー」

「すごい数の屍体人形が打ち捨てられているわね」


 そこで目にした光景は、見渡す限りに屍体人形が打ち捨てられ、野を覆い川をふさぐという凄絶な状況だった。


「く、空気が変わったサメエ」

「ヒスイ河の戦いの結果でしょう。おそらく〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟防衛線を引き下げ、補給路が繋がる部分まで縮小した結果、維持できない人形を捨てていったと思われます」

あとがき

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