表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
742/795

第736話 クマ国と完全正義帝国の命運をかけた戦い

736


「ゼンビン、遅かったじゃないか。こっちはもう祝勝会の前夜祭が盛り上がりすぎて、くたくただ」

「グハハ。最後の晩餐ってやつか。終わったなら潔く冥土へゆけい」


 西暦二〇X二年一一月二五日午後。

 ヒスイ河本流の対岸で向かい合った、茶髪天然パーマの青年、左玄さげんチョウコウと、白い短髪で長身痩躯の〝殺戮者エリミネーター〟ゼンビンは、それぞれ軍を率いて再び激突した。


「「チョウコウ、元輸送隊長風情がえらそうに。眼前にあるジャンク船団と、大量の〝兵士級人形ソルダート〟、大火力の〝騎士級人形ルイツァリ〟が目に入らないか」」


 今となっては貴重極まりない、一〇隻の大型船でやってきた〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟軍は、長距離移動で疲れ果てていたものの、数と兵器にまさることで意気軒昂いきけんこうだった。


「おう、おう。クレーマーの皆さん、今回は立派なハリボテ、いやキャンプファイヤーの火種を準備してくれてありがとうさん」

 

 されど、先行していたチョウコウ達、クマ国強襲揚陸部隊が何の準備もしていないはずはない。

 河岸の桟橋に立つチョウコウを要に、開いた扇のように小型船を展開して待機。戦闘開始直後から、あたかも渦を巻くかのごとく、敵艦隊を取り囲みながら移動し始めた。


「カムロさん相手にはさっぱり効かなかったが、今度こそは成功だ。勝てない強敵が相手なら、勝てる場所まで招き寄せて討つ。これぞ〝調虎離山ちょうこりざんの計〟ってね!」


 チョウコウは、〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟の船団が、河中央まで達したところで拳をかかげふ合図を送り……。

 葉桜万寿はざくらばんじゅら〝北府隊〟の術師達が、風や水の鬼術で加速させた小舟をぶつける。

 いわゆる小早と呼ばれるやぐらを持たず、帆と櫓で動く簡素なボートには、ガソリンや発火札が山と積まれていた。


「グハハ。チョウコウ、そう来たかっ」

「「ひっ、やめろっ。死ぬのはお前らで我々じゃなーい!」」

「……一瞬だが、〝偽豪傑ズメエヴィチ〟の力を解放する。溢れるパワーは、風すらも動かす。秘技、〝竜吼旋風ドラゴニック・ハリケーン〟!」


 チョウコウが放つ風にのり、無人船はあたかもミサイルのように敵艦隊へ突撃し、爆破炎上を繰り返したながら嵐のように吹き荒れる。


「「GAAAAA!?」」


 物悲しい叫び声は、屍体人形にされた犠牲者の怒りか悲しみか、それとも救ってくれたことへの感謝だろうか?

 河川の上を群れなして飛ぶ天使を模した人形の大軍も、一撃で小船をしずめる火力を持つ戦車キメラも、燃える業火の中で焼かれて、紙吹雪のように散っていった。

 

「ゼンビン。俺はアンタみたいな本物の豪傑じゃない。もし一騎打ちをすれば、百回戦って百回負けるだろうさ。だが、万寿ちゃん達、部下の力を借りる集団戦なら、お前相手にも一勝をもぎとれる」

「グハハっ。それでこそ、それでこそ、おれが認めた指揮官よ。実に愉快ぞ!」


 ゼンビンは燃える船の中で満面の笑みを浮かべ、白い短髪から流れ落ちる汗をぬぐいながらゲラゲラと笑った。


「「くそがくそが、人形どもを使って火を消せ、ぐえええ」」


 一方〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟の指揮官達は、どうにか屍体人形を操って事態を収拾しようとするも、酸欠で体が動かなくなり、バタバタと倒れた。

 既にヒスイ河本流は火の海で、もくもくと立ちこめる煙とぱちぱちと飛散する火花は、天をも焦がすほどだ。


「チョウコウよ、火船による集中放火というのは凄まじいな。リノーめは、数を揃えることを優先したが、命令に従うだけの、自動化オートメーションされた屍体人形にばかり頼るのも考えものよな」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

ブックマークや励ましのコメント、お星様、いいねボタンなど、お気軽にいただけると幸いです(⌒▽⌒)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
壁に文字を刻んでおきましょう 赤壁
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ