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第734話 チョウコウの秘策

734


「チョウコウよ、ここまで打ち合えるとは、素晴らしい。さあどうやっておれを殺す? 作戦というからには、当然なにか策はあるのだろう」

「ああ、あるとも。たったひとつだけ、とっておきの策がな」


 異世界クマ国の司令官代理と強襲揚陸部隊長を兼任する、茶髪天然パーマの青年、左玄さげんチョウコウは、〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟の前線指揮官である白い短髪の悪鬼ゼンビンと刃を交わしつつ、じりじりと策を実行に移すタイミングを見計らう。


「ほう、チョウコウ。お前にしては自信満々だな。愉快千万!」

「ゼンビン、俺は全然楽しくないっ」


 ゼンビンが赤く輝く日本刀オロチノアラマサで突き、凪ぎ、払うのに対し、チョウコウは身につけた竜人のごとき装束の籠手や肩当てで、辛くも受け止める。


「グハハ、器用な真似をする。お前が輸送隊長をやっていた時、どんな場所でも荷物を届けただろう? その諦めの悪さが、おれは気に入っているんだ」


 ゼンビンは歓喜の笑みを浮かべ、更に激しい連続攻撃を浴びせかけた。


「「GAA!?」」


 その怪力と剣速は尋常でなく、巻き込まれた屍体人形の手や足だけでなく、首や胴体までがスパスパと巻藁のように切り飛ばされている。


「くっそがああ。こっちはワンミス即死だぞ、少しは加減しろバカァっ」


 だが、チョウコウもまた常人ではなかった。ワザと屍体人形を招き寄せて乱戦に持ち込み、盾代わりに用いるなど、生き延びるためにありとあらゆる手段を尽くす。

 クマ国代表カムロとすら撃ち合った脅威的な粘りで、ゼンビンの攻撃を左右に捌き、トンファーめいた腕の武器でカウンターをあびせ返すほどだ。

 ……とはいえ、〝山鶏魔女バーバヤーガの鏡〟による強化には時間制限があり、彼が身につけた竜人装束は既に脚部を残して、ほぼほぼ消失していた。


「どうした、チョウコウ? このままでは死んでしまうぞ。そろそろ、たったひとつの策とやらを見せてみろ」

「ひいっ。見せてやるとも、ゼンビン。俺に残った策、それは!」


 チョウコウは、ゼンビンが振り下ろす赤く輝く日本刀が頬をかすめるや、情けない悲鳴をあげながらきびすをかえし……。


「逃げるんだよーっ」


 わずかに残っていた脚部装甲で、向き合った敵手の細い足を蹴りつけ、一目散に逃げ出した。

 チョウコウが竜人変身を使って戦ったのは、あくまで仲間達が離脱準備をするまでの、時間稼ぎが目的だったのだ。


北府号ほくふごう、いつでも発進できます。司令官、手を!」

「バンジュちゃん、助かった」


 チョウコウは副官である、ふわふわの桃色髪を縦ロールにまとめた鴉天狗、葉桜万寿はざくらばんじゅに手を握られて、大型バスに似た空中浮遊する車両へ飛び乗り、間一髪で死地を脱した。


「司令官に続け。おさらばだ」


 チョウコウの部下達、強襲揚陸部隊〝北府隊〟のメンバーもまた、〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟の軍勢や、彼らが操る屍体人形の攻撃をかいくぐりながら、ホバーベースに乗り込み、尻に帆をかけて逃げ出した。


「おいおい、チョウコウ。それは興醒めだろう?」


 呆気にとられたのは、殺しあう気満々だったゼンビンだ。赤く光る日本刀で衝撃波のようなものを周囲にぶちまけながら吠え猛る。


「古来より、〝三六計逃げるにしかず〟ってねっ。あばよ、ゼンビン!」


 その後、チョウコウは、部下の万寿達が使う防壁や幻影などといった様々な術で、追っ手の銃撃や爆撃をいなし、戦場からの離脱に成功した。


「司令官、これからどこへ向かうのですか?」

「そりゃあもちろん、〝ここではない、どこかへ〟なんてな。……バンジュちゃん、皆を集めてホバーベースから降りる準備をしてくれ」

「ど、どういうことです?」


 チョウコウは、焦る万寿に微笑みかけた。


「逃げるとは言ったが、ゼンビンに目をつけられた以上、捕捉されるのは時間の問題だ。だから、俺はこの追われる状況を利用する」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
直ぐ逃げるキャラは、味方から見ると頼りなさそうに見えるけど、敵に回すと激しく面倒という不思議。 やっぱり「逃げる」というのは大事。
>「逃げるんだよーっ」 CV:ジョゼフ・ジョ〇スター
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