表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

74/787

第72話 〝八岐大蛇・三の首〟討伐

72


舞台蹂躙ぶたいじゅうりん役名変生やくめいへんじょう――〝大蛇おろち〟! わしは最強の存在だあ!」


 黒山くろやま犬斗けんとは呪われた最後の銃弾を、自らに向けて放つことで、〝豹口鬼(フラウロス)〟から更なる悪鬼へと更なる進化を遂げた。


「グヒヒ、小僧め。わしの足が〝千曳ちびきの岩〟から削りとった端末であることに気づかなかったろう。この深謀遠慮しんぼうえんりょこそ、わしが人を超えた真のエリートである証。地を裂き山を割る力に、恐れおののけええ!」


 黒山は、全長一〇メートルの巨大な大蛇となった体をくねらせながら、岩をも溶かす毒の息を吐き、〝鬼の力〟によるビームを瞳から発した。


「なんだ、流れ弾!?」

「うわああああああ!!」


 その威力は広間の岩盤を貫き、秘密基地内に流れ弾が届くほどだ。

 矢倉や防壁が吹き飛び、毒ガスを吸った両陣営の冒険者がもんどりうって倒れる。


「〝夜叉ヤクシニーの羽衣〟よ、応えて。やなぎさん、祖平そひらさんは毒の解呪を! 林魚はやしうお君達は倒れた人の避難を手伝って!」

「「はいっ」」

「「わかりましたっ」」


 とはいえ、遥花はるかが指揮するレジスタンスが、互いに助け合って立て直したのに対し――。


「ちくしょう、装備を寄越せ」

「うるさい、これはおれのだ」


 元勇者パーティ〝C・H・Oサイバー・ヒーロー・オーガニゼーション〟は見苦しくも同士討ちを始め、一気に崩壊した。


「何が深謀遠慮だ。後先考えていない見え見えの攻撃が、当たるかあ!」

「サメ分身サメエ」


 そして桃太は、紗雨が作った囮に黒山の攻撃をひきつけ、自らは左手にまとう水のドリルで大蛇の尾を削り始めた。


「ええいちょこまかと、ならば、こうしてやる!」


 黒山は痺れを切らしたのだろう。

 敢えて桃太を待ち受け、家ほどもある大口をあけ、禍々しい牙を開かせて桃太に食らいついた。


「劣等生など一呑みよ!」

憑依解除リムーブマスク


 額に十字傷を刻まれた少年は、サメの仮面を外して、にこりと笑った。


「俺の間合いへようこそ、〝生太刀いくたち草薙くさなぎ〟!」

「こ、こんな馬鹿なあああ!」


 桃太は右手を高々と掲げ、薙ぐように手刀を振るって、大蛇の頭へ直撃させる。

 次の瞬間。衝撃の刃が半径二メートルの空間を微塵に切り刻み、大蛇の頭ごと上半身を粉砕。

 残された長大な下半身も、赤い霧と黒い雪となって崩壊を始めた。


りんぴょうとうしゃかいじんれつざいぜん――九字封印!」


 桃太が九字を切ると、鬼の仮面が真っ二つに割れて、蛇の胃中から黒山が転がり出た。

 されど、〝鬼の力〟に身を委ねた因果が応報したのだろう。彼の四肢ししは食われて消え失せていた。


「なぜだ。わ、わしは、さいきょうのちからを得たのにっ」

「八岐大蛇の首は、この世で最強の力だ。といっても使いこなせなければ、宝の持ち腐れよなあ」

「誰の声!?」


 桃太は不意に、どこかで電灯のスイッチが入るような、世界がズレるような不可思議な感覚に身震いした。


(これは、カムロさんと同じ結界、か? だけど、妙に血生臭くて、甘ったるい……)


あとがき

お読みいただきありがとうございました。

ブックマークや励ましのコメント、お星様、いいねボタンなど、お気軽にいただけると幸いです(⌒▽⌒)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 広範囲の毒は怖いですが、毒消しの使い手がいるなら脅威ではない感じですね。 桃太たちにとっては空間を操っていたフラウロスのほうが、大蛇より厄介だった印象です。 まあ使いこなせていないだけみたい…
[一言] レベル1の存在に、レベル99で覚える技を使えるようにしてもねぇ……それもきちんと鍛錬してたならともかく 賈南「此度の〝巫の力〟に選ばれた存在は口撃がうまくない様だからなあ。少し、教授してや…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ