第731話 コウエンとアカツキの共闘
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「「なんだ、なにがどうした?」」
「「GAAA!?」」
西暦二〇X二年一〇月一五日。
異世界クマ国に新設された強襲揚陸部隊〝北府隊〟の初代隊長兼、クマ国軍臨時司令官に任命された茶髪天然パーマの青年、左玄チョウコウは部下と共にホバーベースに乗り込み、〝完全正義帝国〟が占拠した転位門〟や、主要な街道沿の補給地点を次々と奇襲。
「「うおおお、やっちまえ」」
絶対に安全と気を抜いていたところへ次々と火をつけて、空を自在に飛ぶ天使を模した〝兵士級人形〟を羽ばたく前に焼き討ちし、甚大な火力を誇る戦車めいたキメラ〝騎士級人形〟も、実力を発揮できないままに爆破炎上させた。
「「た、たすけ、あぢいいい」」
当然ながら、屍体人形を使役していた指揮官もまた炎に包まれて消えてゆく。
「や、やりましたあ」
チョウコウの副官である、ふわふわの桃色髪を縦ロールにまとめた鴉天狗の少女、葉桜万寿は、従姉妹の千隼と同じ蛇腹剣を振るって奮戦していたものの、苦戦続きだった〝完全正義帝国〟に一矢報いたことで歓声をあげた。
「バンジュちゃん、クマ国の兵士諸君、攻撃を加え続けろ。テロリスト団体〝完全正義帝国〟は、自称するように一〇万の兵がいるわけじゃない。一〇〇の兵士が、一〇〇〇の人形を操っているだけだ。駒は無視して差し手を狙うんだ!」
「「新隊長と強襲揚陸部隊のお披露目だ。やってやるぜえ」」
チョウコウ達は、元輸送隊として〝完全正義帝国〟の補給路を熟知していたため、勢力圏内だと油断したテロリスト達に甚大なダメージを与えた。
「「こ、こうなったら奪うしかない」」
特に物資の損耗は激しく、食い詰めたテロリスト達が、クマ国の物資を略奪しようと警備の薄い拠点を狙うのは、自明の理だろう。
そして、チョウコウにとって、そんな悪党共を罠にかけるのは、物資をかじるネズミやコクゾウムシの相手をするより容易かった。
「よし、作戦通りだ。さすがカムロ様が見出した男よ!」
「胡散臭いと思いましたが、葉桜万寿を送り込んだ甲斐がありました。起爆します!」
チョウコウの指示を受け、クマ国軍主力部隊を率いる芙蓉コウエン将軍と甲賀アカツキ特務隊長は、食料倉庫の中に盛りだくさんの火薬を敷き詰めた火罠を仕掛け、盗人の襲来を虎視眈々と待ち受けていたのだ。
「おいバカやめろ。うぎゃあ」
「二本足の獣め、俺は貴様達の主人になる男だぞ。ぐわああ」
「「我が軍の方がずっと多いのに、こんな、こんな最期だなんていやだああ」」
コウナン地方東部と西部に侵攻した〝完全正義帝国〟の戦力はかくして火に包まれ、クマ国軍は防衛に成功する。
「なるほど、厄介な〝兵士級人形〟も指揮官が動かせねばただの的か。やるではないかあの若造!」
「左玄チョウコウ。部下に欲しかった。いやこの際、上司でもいいか。彼と共に戦えて誇らしい」
この結果、チョウコウは、宿将のコウエン、若手代表のアカツキに、自分たちを束ねるに足る将と認められたのだ。
「チョウコウ司令、やりましたねーっ」
「「鞍替えした甲斐があった。やった、やってみせたぞ」」
副官の万寿や、輸送部隊から着いてきてくれた部下達は喜んでくれたものの……。
「そうだな。バンジュちゃんと、お前らのおかげだよ」
大金星をあげたチョウコウに勝利の実感はなく、ただただ同胞の命運が皮首の皮一枚で繋がったことに安堵するばかりだった。
(イタル。にーちゃんは、頑張ってるぞ。後は、ゼンビンをどうするかだ)
あとがき
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