第723話 獅子奮迅の活躍
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「むふふ、噂されてるサメエ」
「二人でいいところを見せようか」
「「GAA! GAAAA!」」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太と、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨は、屍体を材料に使った人形で虐殺を繰り返すテロリスト団体、〝完全正義帝国〟がコウカ要塞より派遣したジャンク船二〇隻の艦隊と交戦を開始。
三本の足と尾ひれが特徴的な人魚の一種、アマビエ族の女性兵士を含む異世界クマ国のベンスイ砦守備隊を守るべく奮戦した。
「ひーふーみー、ざっと五〇〇か。いくぞ〝兵士級人形〟! 乂直伝の、ドロップキックからの、我流・長巻を受けてみろ!」
「「GAA!?」」
桃太は衝撃波を生かして戦場たるヒスイ河支流の水上を跳躍し、〝完全正義帝国〟の指揮官が操る空を飛ぶ屍体人形が投げつけてくる槍を回避しながら、両足の飛び蹴りで応戦する。
その上で、両腕に巻きつけた衝撃の刃を独楽のようにぶん回し、一〇体の〝兵士級人形〟をザクザクと切り伏せて撃墜した。
「サメーっ。お揃いでえ、サメキックからの空中サメ投げなんだサメェ」
「「GAA! GAAAA!?」」
紗雨もまた水面をアメンボのように軽やかに走りつつ、手足を刃に変えて空中から襲い来る〝兵士級人形〟二〇体の顔面を蹴飛ばして動きを止め、一本背負い、巴投げ、四方投げを繰り出して川の中へ放り込む。
「よーし、次は船に乗っている〝騎士級人形〟四〇体を叩きに行こうか」
「援護は任せて欲しいサメエ!」
「「ちいい、撃ち落とせ!」」
「「GAAAA!?」」
桃太と紗雨は、完全正義帝国のジャンク戦へ飛び込み、甲板に並ぶ獅子の顔と山羊の胴体、蛇の尾を持つ戦車キメラこと〝騎士級人形〟二体が口から放つ砲弾をあっさりと回避。
「紗雨ちゃんがいるなら、こういう技もできる。我流・水長巻」
「サーメッメッ。目ん玉ひんむいて見るんだサメエ!」
「「GA! GAAA!?」」
桃太は、紗雨の操る水を自ら腕にまとわせて、高速振動するウォーターカッターを形成し、正面の戦車キメラ一体の獅子首を落とすや否や、返す刀で後方のキメラのヤギの胴を両断、再生を防ぐため蛇の尾に至るまでバラバラに破壊した。
「紗雨ちゃん。みずちさんが橋の工作を終えるまで、そう長くはかからないだろう。もう変身しちゃおうか?」
「桃太おにーさん。待ちかねていたんだサメエエ」
船を制圧した二人は、傷の入った勾玉を左右の手で掴み、天へかざした。
「「あぶないっ。紗雨姫、桃太様、動きを止められてはいけません」」
その頃、三本の足と魚の尾ひれが特徴的なアマビエ族の女性兵士ら、ベンスイ砦の守備兵達は、ヒスイ河上空を占拠した〝兵士級人形〟約五〇〇体に対して弓矢や鬼術で応戦し、桃太と紗雨の支援を受けて四〇〇体まで撃ち減らしていたものの……。
二人がジャンク船の上で動きを止めたことを心配し、〝鬼の力〟で荒れ狂うヒスイ河の支流へと飛びこんだ。
しかし、彼女達の心配は無用であっただろう。
「「舞台登場、役名変化――〝行者〟ッ。サメイクヨー!」」
桃太と紗雨が名乗りをあげるや、風が吹き、水が舞った。
桃太の格好は桃色のストライプが描かれたジャージから、白衣に鈴懸を羽織った修験者風の法衣姿となり、傷ひとつない白銀に輝く勾玉を左手に結わえ、左目の上にはサメ顔に似たお面を被っている。
二人は変身の余波だけで、〝完全正義帝国〟の船団にはびこる鬼気や瘴気を一掃し、荒れ狂っていた川面をも鎮めていた。
「さあ、やろうかあ。新技のお披露目だ、我流・水長巻改め……」
「シャークブレードなんだサメエエ。ガンガンいくんだサメエ!」
あとがき
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