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第715話 左玄チョウコウの分析

715


左玄さげんチョウコウはどう思う? 〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟が寄越した降伏勧告への対応について、忌憚きたんのない意見を聞かせて欲しい」


 牛頭を模した仮面をかぶる幽霊、異世界クマ国代表カムロが意見を求めると、彼に抜擢された茶髪天然パーマの青年、左玄チョウコウは話しかけないでくれとばかりに目を逸らした。


「……カムロ様の質問に答えんか、若造がっ」

「カムロ様、彼はテロリスト団体〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟から引き抜かれたばかり。我が国の状況にも詳しくないでしょうし、この場には相応しくないのではありませんか?」


 しかしながら、そんな真似をすれば、大鏡を通じて〝遠隔通神〟会議中の、白髪の老将軍、芙蓉ふようコウエンと、黒い翼を持つ若き特務隊長、甲賀こうがアカツキの不興を買うのは、火を見るより明らかだ。


「待ってくれ。考えをまとめていたんだ」


 チョウコウも、ここで黙り続ければどんな目に合わされるかわからないと思い至ったのだろう。渋々ながら分析を口した。


「俺も御三方同様に、降伏勧告は無視すべきだと思う。その上で、カムロさんの力を借りなくとも、今すぐにでも〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟を攻めるべきだ。なぜなら、ここが分水嶺ぶんすいれい。奴らを早期に鎮圧できる唯一無二の好機だからだ」

「「!?」」


 カムロは、チョウコウの返答を聞いて、ニヤリとほくそ笑んだ。


「へえ、チョウコウ、理由を説明できるかい?」

「〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟から送られてきた降伏勧告、リノーとゼンビンの連名で送られていたが……。

 これはカムロ様が、連中の指導者であるゲドウジジイ、ごほん。長老達を軒並み倒したことで、若手の支持を集めていた二人が新たに実権を握ったからだろう」


 チョウコウは咳払いして、率直な推測を語る。


「しかし、リノーとゼンビンもおそらくは、まだ組織を掌握しょうあくできていない。降伏勧告を送りつけてきたのは、〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟を手中に握るまでの時間稼ぎに違いない。だから連中の足元がゴタついている今こそ、千載一遇せんざいいちぐうのチャンスなんだ」


 チョウコウの回答は、コウエンとアカツキにとって納得はできても、受け入れ難いものだった。


「チョウコウ、簡単に言ってくれるな」

「〝完全正義帝国〟にいた貴方は、実際に戦ったことがないから、簡単にいえる」


 なぜならコウエンもアカツキも、敵のエースである剛力無双のゼンビン、そして彼らが操る不死身の屍体人形と刃を交えた上で撃退されているからだ。


「俺だって、リノーとゼンビンの強さは知っているよ。

 〝前進同盟〟代表のオウモさんも高く評価していたし、落ち目になったとはいえ長老達から〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟の実権をぶんどれるのは、あの二人だけだろう。

 だからこそ、奴らは部下の支持を得るために、攻め続けなければならない。交渉して下手に和平を結んだ日には、今度は彼らが下の奴らに用済みと判断されて、下剋上げこくじょうをされかねないからだ。そして、もうひとつ重大な理由がある……」


チョウコウは、彼だからこそ言える恐ろしい真実を口にした。


「コウエン将軍もアカツキ特務隊長もさっきから口にしているから、知っているだろう? 〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟の主力は、殺害した人々の遺体を加工した屍体人形だ。リノーとゼンビンが、三世界征服を狙っている以上、奴らは戦力確保のために殺し続ける必要がある。もしも降伏して武装放棄なんかした日には、皆殺しにされるぞ」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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>もしも降伏して武装放棄なんかした日には、皆殺しにされるぞ リノー&ゼンビン「「クマ国に降伏軟化した日にはブラック労働が待ってるぞ」」
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