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第710話 コウナン地方攻防戦、一カ月目の戦況

710


「グハハ。たいしたことないな。カムロのいないクマ国軍は烏合うごうの衆か?」


 異世界クマ国で四〇万人に及ぶ大虐殺を引き起こした、元地球人のテロリスト団体、〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟の前線指揮官。身長二三〇センチメートルの高身長ながら、幽鬼のように青白い肌と枯れ枝のように細い肉体が不釣り合いな長身痩躯の豪傑、ゼンビンの感想は正しかった。


「ええい、ここは我ら陸軍の戦場だぞ。西のアカツキ隊など無視してしまえ」

「くそ、コウエン。東の猪武者どもめ、我々の邪魔ばかりする!」


 異世界クマ国の陸戦部隊を指揮するコウエン将軍と、空水戦部隊を統括するアカツキ特務隊長の仲は、平時から極めて悪かった。

 地球の日本政府に反旗を翻した元勇者パーティ〝C・H・Oサイバー・ヒーロー・オーガニゼーション〟の悪漢、黒山犬斗くろやまけんとの侵攻を受けた際も、およそ連携が取れているとは言い難かった。

 そして両者は、多大な流血を強いられる窮地においてなお、お互いの足を引っ張るという、最悪の事態を引き起こしてしまう。


「この死地で、派閥闘争とは余裕だなっ」


 ゼンビンは、コウエンとアカツキの方針違いでまごつくクマ国軍勢に対し、〝転位門ワープゲート〟を用いてヒスイ河一帯を転戦。速度と輸送力、耐久性にも秀でた三本マストのジャンク船を使って奇襲を繰り返す。

 彼が赤く光る日本刀オロチノアラマサを振るうところ、東の陸沿いに防衛陣を展開するクマ国軍の兵士も、西の空から侵入を試みる特殊部隊も、分け隔てなく

血煙となった。


「つ、強いっ。若造め、それほどまでの怨念に憑かれたか」

芙蓉ふようコウエン。アンタの名前は知っているよ。半世紀前にクソったれの長老どもから逃れて、クマ国に亡命したのは、慧眼けいがんだ。血塗られた道を歩くおれやリノーよりもずっと真っ当な生き方だろうさ。だが、怨念こそがより強い〝鬼の力〟を招くのだと知るがいい」


 白い髭こそ目立つものの、クマ国でも随一の力自慢で知られるコウエン将軍はゼンビンと交戦。

 自慢の斧を縦横無尽に振るってラッシュをかけるも、天を衝くような長身から振り下ろされる赤い日本刀オロチノアラマサが雷光の如く一閃し、愛用の武器を破壊され利き手も切られて撤退。


「まさか、これほどの軍備を事前に準備していたとはっ。それでもっ!」

「甲賀アカツキといったか。その若さで空水軍を担う特殊部隊を任されるのは実力があるんだろう。だが、殺すことにかけてはおれ達が勝る。屍体人形ども、狩猟の時間だ!」


 若いながらもクマ国屈指のスピードを誇る鴉天狗アカツキと精鋭もまた、ゼンビンが支配する人形軍団から毒と呪いを受けて、後方へ下がらざるを得なかった。


「グハハ。味噌汁ミソスープで顔を洗って出直すんだなっ」

「「おのれおのれ、カムロ様がいない我らでは勝てないのか!」」


 かくして、西暦二〇X二年九月におけるコウナン地方を巡る戦いは、クマ国陣営である出雲桃太が北で、代表であるカムロが南で勝利するも……。

 東で芙蓉コウエン将軍率いる陸戦部隊、西で甲賀アカツキがまとめる空戦特殊部隊、〝完全正義帝国〟の前線指揮官ゼンビンが敗退に追い込まれ、戦線は膠着する。

 そして、月があけた西暦二〇X二年一〇月一日。

 〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟は、新たなる指導者リノーとゼンビンの連盟で、異世界クマ国に対して以下のように無条件降伏を勧告した。


『愚かなる支配者カムロの首と、クマ国全域の支配権を寄越せ。さもなければ全てを焼き尽くす』

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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>味噌汁で顔を洗って出直すんだなっ たぬ「特製味噌汁は美味しいたぬよ?」
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