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第707話 チョウコウ、クマ国に投降す

707


「……そうか。イタルはクマ国に救われて、そっちに着いたか。あいつなら、そう選ぶよな。だったら、〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟に未練なんてないや。クソッタレた長老達の元じゃ、どうせ出世もできないからな。カムロさん、降伏して貴方の元で働くよ」


 西暦二〇X二年九月中旬の某日。

 異世界クマ国の代表である、牛の仮面をかぶった足の見えない幽霊カムロは、 〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟の輸送隊長である、茶髪天然パーマの青年、左玄さげんチョウコウが陣営を鞍替えすると表明したことで、大いに喜んだ。

 カムロは先ほどまでの戦いを経て、彼の才能を高く評価していたからだ。


「チョウコウ、お前はきっと大成できる。ひょっとしたら〝一万人に匹敵するような大将軍〟にだって、なれるかもしれない」

「そいつはどうも。御世辞でも嬉しいや。でも、俺なんかより、金のかかったホバーベースを接収できた方がお得だぜ。葉桜さん、鍵はそっちのロッカーにある」

「万寿で良いですよーっ。葉桜さんだと、従姉妹の千隼ちゃんと混ざってしまうので……」


 大柄な若き青年、左玄チョウコウは万寿を手伝っていたが、エンジンの起動に成功したのを見て安堵したか、カムロの元へ戻って、牛頭の仮面に空いた穴から瞳を覗こんだ。


「ジイさん、いやカムロさん。部下の命と、ガキどもの命を保証してくれるなら、アンタの為に全力を尽くそう」

「ああ、逃げた後の合流地点は決めてあるんだろう? あのホバーベースで迎えに行こう」

「ありがとう。カムロさんが夢に見たという変なドラゴンの気持ちが、今ちょっとだけわかったよ」


 おそらくはチョウコウなりの感謝だろうが、カムロは最後の余計なひとことに肩をすくめた。


「怖いこと言うなよ」


 カムロが受け継いだスサノオの記憶にある邪悪竜ファヴニールは、罪もない民間人の虐殺を繰り返す〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟に負けず劣らずの、極悪非道をやらかした外道だ。

 にもかかわらず、スサノオ自身は、宿敵にある種の尊敬と憧憬を抱いていたらしいし、かの竜もまたスサノオに対し、執着を見せていたようだ。


(僕はスサノオの影武者としてこの世界、クマ国に召喚されたから、彼の記憶がある。だが納得できるかは別だ)


 カムロには、好敵手というよりは、怨敵に近いはずのスサノオとファヴニールが胸中に秘めていた、相思相愛にも似た敵意という感情がまるで理解ができない。

 というか、あの機械仕掛けのちゃらんぽらんドラゴンがオタ芸ダンスをキメるトンチンカンな夢をみたせいで、両者の関係がよりいっそうわからなくなった。


「第五の首、隠遁竜いんとんりゅうファフニールをかたる、邪悪竜ファヴニールめ、夢見を悪くして精神力を削ろうだなんて、とんだ性悪だ」


 カムロの評価を聞けば、隠遁竜ファフニールは「ボクが憎まれているのは、アンタのせいかよオヤジいいい」と絶叫し、冤罪えんざいを晴らそうとやっきになることだろうし……。

 邪悪竜ファヴニールも「疲れているから、元気づけようとダンスしたのに!」と誤解をとこうと抗議したことだろう。

 だが、カムロの中で積もり積もった憤怒の炎は、もはやちっとやそっとでは鎮まりそうになかった。


「油断のならないあいつは、必ず最後に滅すると決めている。だから、それまではこの怒りを〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟の腐れ外道どもにぶつけさせてもらおうか!」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
万人敵だって!? んんん~~~~~~どこかで聞いたことがある気がするなぁ、気のせいかな(すっとぼけ
>〝一万人に匹敵するような大将軍〟 クマ連れてこないと……もしやクマ国が?(違)
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