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第706話 チョウコウ、葉桜万寿と出会う

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「チョウコウ、お前はあの邪悪な竜と違い、そこまで悪事を働いていないようだから、部下ともども命を助けよう。もう一度たずねる、投降して僕たちの側につけ」


 異世界クマ国代表カムロが、壊れた要塞の瓦礫がれきに腰をおろし、腰痛に耐えつつ呼びかけると、テロリスト団体〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟の輸送隊長、左玄さげんチョウコウはごくりと生唾を飲んだ。


「カムロさん。そいつはできない相談だ。元上司のオウモさんと敵対する羽目になった夜もさんざん悩んだが……。俺は元々、学のないチンピラでね。アンタが認めた強さは、こんなダメな兄貴分を慕ってくれたガキ、芙蓉ふようイタルが色々と骨を折ってくれたおかげなんだ。負けた以上、投降はする。だが、俺は今も長老達が人質に取っている、アイツらガキどもの味方だ。クマ国につくわけにはいかない」


 チョウコウが、あたかもラグビー選手のように恵まれた体を恐怖で震わせながらも、首を横に振って断った時。


「カムロ様、ここに居られたのですね。……あれ? 芙蓉イタルって、千隼ちゃんが言っていた可愛い子のことですか?」


 ふわふわの桃色髪を縦ロールにまとめた鴉天狗の少女が、コウリョウ要塞の奥深く、ホバーベースを止めた格納庫へと入ってきた。


「なんだアンタ、唐突に来てなにか知っているのか?」

「チョウコウ、紹介しよう。僕の部下の葉桜万寿はざくらばんじゅだ。到着して早々すまないが、腰に薬を塗ってもらえるかい」

「はい、カムロ様のお手伝いをさせていただく葉桜万寿です。貴方は、陸軍の新人さんですか?」


 カムロの手当てを始めた万寿から、くったくのない笑顔を向けられて、チョウコウは背中がかゆくなった。


「万寿。彼は、左玄チョウコウ。たった今まで僕と互角に戦っていた豪傑だ。切り札の〝生太刀いくたち草薙くさなぎ〟でようやく倒せた益荒男ますらおだぞ」

「カムロ様、またまたご冗談を……え、ほんと? すごい、信じられない。二千年を生きる付喪神の田楽おでん様や、お弟子である出雲桃太いずもとうた様以外にも、そんな人いたんだ!」


 チョウコウには信じがたいことだが、万寿にとってカムロと戦ったというのは、マイナスイメージではなく、むしろ偉業らしい。


「葉桜万寿さんだっけ。このジイサンのホラを信じるんじゃない。あのオウモさんが一目置くクマ国最強の女傑や、八岐大蛇の首を刈り取った地球日本の勇者と一緒にされたら困る。〝生太刀いくたち草薙くさなぎ〟なんて関係なく、俺はボコボコに負けたばかりだよ」

「でも、ちゃんと立っているじゃないですか。ごくごく稀に機会がある模擬戦じゃ、部隊全員でかかってもあっという間に全員倒されちゃうのに……。ああ、カムロ様、腰がこんなに張って。頑張りすぎですよ」


 結果から見れば、カムロは腰痛でダウンし、チョウコウは半壊した壁にもたれかかりつつも膝をついていない。

 万寿が誤解したとしても、無理はないかも知れない。


「俺が立っているのは、負けたなりのやせ我慢だ。察してくれよ。そんなことより、芙蓉イタルのことを知っているのか?」

「従姉妹の千隼ちはやちゃんが、〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟と戦っていると言っていました」

「なんですと?」


 チョウコウが大きく目を見開くと、カムロが万寿の治療を受けながら補足した。


芙蓉格ふよういたるは、逃亡中に僕の弟子である出雲桃太が救出した。今は彼と行動を共にしているそうだ」


 カムロの説明は、チョウコウが疑っても仕方がないくらい突飛で、都合が良いものだった。

 だがチョウコウはカムロというよりも、イタルという少年ならば、そのようにすると信じた。


「……そうか。イタルはクマ国に救われて、そっちに着いたのか。あいつなら、そう選ぶよな。だったら、〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟に未練なんてないや。クソッタレた長老達の元じゃ、どうせ出世もできないからな。カムロさん、降伏して貴方の元で働くよ」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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>カムロさん、降伏して貴方の元で働くよ レ領の皆さん「ようこそ、終わりが無いデスマーチに」
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