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第704話 カムロ、旧敵と再会? する

704


「へえ、チョウコウの鬼神具には、そんな使い方もあったのか。やはり実戦に勝る学習なし。僕もまだまだ精進しないと」


 異世界クマ国の代表たる、牛頭の仮面をかぶった幽霊カムロは、 〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟の輸送隊長、左玄さげんチョウコウの策略にかかり、夢を見せて肉体を喰らう式鬼、〝模壁鬼もへいき〟に取り込まれたものの、落ち着いていた。

 腐れ縁であるオウモの弟子、石貫満勒いしぬきみろくら冒険者パーティ〝G・Cグレート・カオティックH・O・(ヒーローズ・オリジン)〟のメンバーは苦しんだものの……。

 元々、初見殺しの傾向が強いギミックだ。最初から夢とわかっていれば対応できる、はずだった。しかし。


「この夢、夜に雪だと、まさか」


 カムロは、武者震いしながら目をこらす。

 遠目に見える黒い夜空の下では、壊れた町並みが打ち捨てられており、間近にある砂浜にはしんしんと、白い雪が降り積もっている。

 それは、カムロにとって凶兆といえる景色だった。


「さ、最悪だっ」


 カムロはゴオゴオという風音と、ザンザンという波音が吹き荒れる中、海の向こうから馴染みのある存在が近づいてくるのを見て、思わず砂浜に拳を叩きつけた。


「邪悪竜ファヴニール、よりにもよってお前かあっ!」


 カムロの眼前に空いたクレーターの向かい側には、地球からの交流物資にあった怪獣映画を連想させるような、何十メートルもある巨大な機械仕掛けのドラゴンがいた。

 ご丁寧に胸のあたりに『ファヴニール』とクマ国の文字で書いた名札をつけているのが、老いた幽霊の胃をいっそうむかむかさせる。


「!?」


 ドラゴンはカムロが見上げていることに気づくや、機械の顔にも関わらず上機嫌に頬をほころばせ、胸部のウェポンラックからビームサーベルならぬ……まっピンクに光るサイリウムを取り出した。


「♪♪」


 そうして砂浜だというのに軽やかな足捌きで円を描くように踊り、右、左、時計回りに逆時計回りとサイリウムを振って、逆立ちからのジャンプを成功させ、最後に流し目で立って決めた。

 いわゆる、オタ芸と呼ばれるジャンルのダンスである。


「いやいやいや、勘弁してくれ」


 が、それを見たカムロの心象はどん底だった。

 彼が受け継いだスサノオの記憶にある邪悪竜ファヴニールは、大勢の罪もない民間人を私利私欲のために虐殺した……〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟に勝るとも劣らぬ悪鬼外道だった。

 だからこうやって悪夢に出てくるのなら、襲ってくる方が自然なのだ。


(このいけすかないドラゴンめ、毎度毎度トンチキな登場に凝りやがって)


 にも関わらず、ファヴニールはカムロと夢で出会うたびに、様々な方法で『キミを応援しているよ』と伝えてくるのだ。

 きっと深く考えても意味がないのだろうが、邪悪なドラゴンの謎行動は、カムロの胃壁と精神力をガッツリ削っていた。


「この悪夢、昨夜も見たんだぞ。一日に二回とか、なんの罰ゲームだ。引っ込んでくれ」


 カムロが口笛を鳴らしながら、ブーブーとブーイングすると、巨大な機械竜ファヴニールはいかにも心外だと言わんばかりに首と尻尾をふりふりジャンプして……。

 やがて悲しそうな顔で項垂うなだれ、がっくりと肩を落としてヨロヨロと海の中へと去っていった。


「いや、そんな『精神的にダメージを受けました、おうちで不貞寝ふてねします』という顔をされても困る。絶大なダメージを受けているのはむしろ僕だ」


 カムロは雪の中、白い息を吐く。

 夢の終わりが近いのだろう。黒い空と白い雪が書き割りのごとく薄くなり、引き裂かれた。


「〝山鶏魔女バーバヤーガの鏡〟と式鬼、〝模壁鬼もへいき〟との合体技恐るべし」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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